オードリー春日&ドランク塚地のYouTube撤退で考える、“キャラクターなりきり”チャンネルの難しさ
昨今、芸能人のYouTube参入が相次いでいるが、その裏でひっそりとYouTubeから撤退する芸能人もいる。
昨年末、ある2名の芸能人がYouTubeでの配信活動にピリオドを打った。その芸能人とは、「古井ひでお」と「グラリオサ音子」。誰だかわからなくても、サムネイルの顔を見ればピンとくるに違いない。古井はオードリーの春日俊彰で、グラリオサはドランクドラゴンの塚地武雅だ。一応、設定としては別人となっているのだが、本稿ではややこしいので、古井=春日、グラリオサ=塚地として論じていく。
まずは、春日と塚地が演じていたそれぞれのキャラクターについて説明していこう。
古井ひでおは、2018年10月~12月に放送された日本テレビ系バラエティ番組『犬も食わない~ディスり合いバトルコント~』で春日が演じたキャラ。芸歴20年の売れない芸人で、YouTuberを気楽な稼業だとナメてかかっていたが、いざ自分がYouTubeデビューしてみたらまったく再生回数が伸びなかった、という内容のコントだった。
このコントの世界観をそのまま現実にスライドさせたのが、古井ひでおチャンネルだ。『犬も食わない』放送中の2018年11月30日に始動し、同番組が放送終了した後もなぜか継続された同チャンネル。コツコツと配信を続け、のべ109本の動画を公開したのだが、昨年12月25日、「【最終回】さよなら古井ひでお/手応えがあった回ベスト3を振り返る【終幕】【感謝】」と題して公開された動画をもって、約2年余りにわたる長すぎるスピンオフ企画を終えたのだった。
一方のグラリオサ音子は、「ジェンダーレス、エイジレス、体ボンレス」が合言葉の男性とも女性ともつかない謎の人物。チャンネルをスタートさせた時期は、2018年11月23日と、きしくも古井とほとんど同じ。これまでに投稿された動画は、のべ202本。精力的に活動していたのだが、昨年12月30日に投稿された「【ご報告】グラリオサ音子から皆様に大事なご報告です」と題した動画をもって、活動休止した。
グラリオサによると、活動休止の理由は「チャンネル登録者数が2年間で20万人に達しなかったから」とのこと。同チャンネルには多くのスタッフが関わっていたと言い、「その方々を潤すことが目的で、それが叶いませんでしたので……」と、要するに採算が取れずに終わりを迎えたことをほのめかした。
現在、古井のチャンネル登録者数は9.09万人で、グラリオサのチャンネル登録者数は8.8万人(1月26日時点)。極めて低い数字というわけでもないが、春日と塚地のネームバリューを考えたら、不本意な実績と言って良いだろう。
YouTubeは、配信者のパーソナルな部分を見せることが喜ばれるメディアだ。芸能人YouTuberであれば、テレビでは見せないような素の表情、思わぬ趣味、意外な交友関係が、ユーザーから好まれやすい。しかし、誰かになりきった時点で素も何もない。仮に、古井でありながら春日、グラリオサでありながら塚地としての本音で話していたとしても、他人のコスプレをしているため、どこか芝居っぽく見えてしまい説得力に欠ける。これでは、視聴者との心の距離がなかなかつめられないというものだ。
塚地は、グラリオサ活動休止動画の中で「ややこしいことしちゃった」「複雑なシステムの中でやっちゃった」と漏らし、「趣味の話をしても『それ本当なの? 嘘なの? キャラとしてやってるの?』と見られてしまう」とぼやいていた。YouTubeで別キャラクターを演じ続けることの苦労と後悔が滲み出ている。