拓かれる“Zoom作品”の可能性ーー映画『ズーム/見えない参加者』は新たな証明の一作に

 いまの私たちの生活に必要不可欠なものとなった、ウェブ会議ツール「Zoom」。サービス開始からすでに8年以上が経っているが、世の中に広く浸透したのはここ1年ほどのことだろう。そう、コロナ禍によって非接触コミュニケーションが求められるなかで、急速に普及したのである。本来は会議ツールではあるが、「オンライン面談」などのビジネス目的の使用法だけでなく、人々が遠隔にありながら同じ時間を共有できる「オンライン飲み会」など、現在もさまざまな活用法が試みられている。そんななか誕生したのが、全編をZoomで撮影したホラー映画『ズーム/見えない参加者』である。

 本作の舞台は、コロナ禍でロックダウン中のイギリス。日本のような外出自粛要請ではなく、厳しく行動が規制されているわけだが、そこで活躍するのがZoomだ。電話でもメールでもなく、より他者との深いコミュニケーションをはかることができる。ところがこの物語に登場する6人の男女は、なんとZoomで“交霊会”を開くというのだ。Zoomを介して、霊との交信をはかろうとするのである。これはオンライン飲み会の延長線上にあるものだといえるが、Zoom活用法の最上級のものでもあるだろう。筆者も仲間たちをZoom上に招集し、バーチャル背景を風光明媚な大自然の画像に統一して“オンラインピクニック”を試みたことがあるが、発想のケタが違う。とはいえ本作は、そういった不謹慎な行為をする者たちの姿を収めた“映画”である。

 あくまでもここでは“Zoomの可能性”について述べたいため、『ズーム/見えない参加者』の詳細への言及は避けるが、本作はホラー映画だ。もちろん、おぞましい「何か」が登場することは言うまでもない。“Zoom交霊会”によって参加者の一人ひとりに降りかかる恐ろしい現象ーーそんなフィクションを、Zoom作品のルールともいえる“一度も会わずに制作する”という条件下で立ち上げている。

 新型コロナウイルスの襲来によって、日本で初めて緊急事態宣言が発令された昨年の4月以降、数多くのZoom作品が登場した。公開延期などの憂き目にあいながらも、無事に『劇場』『窮鼠はチーズの夢を見る』の公開にこぎつけた行定勲監督は、いち早くZoom作品の制作に着手。高良健吾や有村架純、中井貴一や二階堂ふみといったテレビや映画でお馴染みの面々を集め、『きょうのできごと a day in the home』『いまだったら言える気がする』をYouTube上で発表した。

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