終末の3日間に生きる人々を描くーー『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』が名作である理由

 ゲームのプレイ中に、「この村人の一日の生活を追いかけたら面白いのではないか」と考えたことがある人は少なくないはずだ。タイトルによっては、一見目立たない村人にも一日の生活サイクルが設定されており、観察していると”まるで本当に生きているようだ”と錯覚することさえある。筆者が初めてこの感覚を味わったのは『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』だった。

終末の3日間を繰り返す斬新なゲームシステム


 『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』は、任天堂が2000年に発売したNINTENDO64向けの3DアクションRPGだ。後のビデオゲームに多大な影響を与えた『時のオカリナ』の続編となり、グラフィックや操作性、キャラクターのモデリングなど多くの要素を共有している。しかし、『ムジュラの仮面』には前作にはなかった斬新なシステムが組み込まれていた。それが「3日間システム」だ。

 本作の舞台は3日後に月が落ちて滅ぶ運命にある「タルミナ」だ。「最初の朝」から72時間(現実の時間では72分)が経過すると月が落下し、ゲームオーバーになってしまう。しかし、「時のオカリナ」というアイテムで「時の歌」を演奏すれば、72時間をリセットして、主人公が取得したアイテムやステータスはそのままに最初の朝に戻ることができるのだ。このタイムリープのようなシステムにより、何度も同じ3日間を繰り返しながら各地のダンジョンを攻略し、月の落下を阻止する方法を探すことになる。

 そして、当時のマシンスペックの制約を受けながらもタルミナの人々に命を吹き込むことができた最大の要因がこの「3日間システム」といえるだろう。あえて登場人物の行動サイクルを72分に限定することで、時間経過による行動・台詞の変化を付け、プレイヤーが一人ひとりの生活を追いかける楽しみが生まれたのである。また、サブイベントをこなせば、月の落下を控えた終末世界で悩み苦しむ人々を救済することができる。

 たとえば、「クロックタウン」に住む勤勉な郵便配達員である「ポストマン」は、月が落ちる前に逃げるかどうか悩みながらも仕事を辞められずにいる。毎日決まった時間に配達の業務をこなすというルーティンに執着しているのだ。しかし、あるサブイベントを進めれば、ポストマンは仕事の呪縛から解放され、タルミナを去ることを決意するのである。

 そのほかにも、伝統行事であるカーニバルの開催に固執して逃げようとしない大工の親方、失踪した婚約者を探す宿屋の娘など、短い3日間の中でも多様な人間模様が描かれる。一人ひとりの生活や思いを細やかに描いているからこそ、サブイベントが単なるお遣いではなく、キャラクターの生活に介入した実感が得られるのが魅力だ。

仮面を使い分けて攻略する謎解き要素


 『ムジュラの仮面』を語るうえで欠かせないのが、さまざまな特殊能力を得られる「仮面」と「お面」だ。なかでも「仮面」は「デクナッツ」「ゴロン」「ゾーラ」の各種族に変身できる重要なアイテムといえるだろう。デクナッツに変身して空を飛んだり、ゾーラに変身して海中を自由自在に泳ぎ回ったりといった要素は、『ムジュラの仮面』の中でもわかりやすく魅力的な部分といえる。

 一方で、「仮面」や各種アイテムをフルに活用する必要がある謎解きに苦しめられた人は多い。本作にはメインダンジョンとなる「神殿」が4つ存在するが、そのどれもが広大で数多くの謎解き要素が散りばめられている。「仮面」やアイテムなど行動の選択肢が多い分、一つのギミックに対してさまざまなアプローチを試みる必要があることも難しさを底上げしている。特に水流を操作する「グレートべイの神殿」とダンジョンを上下反転させながら攻略する「ロックビルの神殿」はシリーズでも屈指の難易度を誇る。