『時をかける少女』の世界をバーチャルトーハクが再現 「架空」と「実在」が混在する新しい鑑賞体験とは
新型コロナウイルス感染の拡大によって、多くの産業がダメージを受けているが、美術館や博物館も例外ではない。そんな中、オンラインでも博物館の楽しさを伝えるために様々な試みがなされている。
12月7日より、東京国立博物館と文化財活用センターが凸版印刷と共同で「バーチャル東京国立博物館(以下 バーチャルトーハク)」を開設した。その第一弾として、細田守監督のアニメーション映画『時をかける少女』とのコレボレーションでバーチャル特別展「アノニマス ―逸名の名画―」を12月19日より開催することが発表された。
この展覧会は、劇中に登場する同名の架空の展覧会をバーチャル空間に再現するもので、鑑賞者はオンラインから自由にその展覧会を見て回ることができる。実在しない架空の絵画と実在する展示物が混在し、現実と虚構の垣根を超えた、バーチャルならではの展覧会のあり方を目指したものだ。
19日の開催に先駆けて、メディア向け説明会と内覧会が開催された。ここでは内覧会とオンライン会見の様子をお伝えする。
アニメ映画の展覧会を忠実に再現
本バーチャル展覧会は、細田守監督の代表作であるアニメーション映画『時を書ける少女』の劇中に登場する架空の展覧会「アノニマス ―逸名の名画―」を再現したものだ。元々、同映画に登場するその展覧会は、東京国立博物館研究員・文化財活用センター企画担当課長の松嶋雅人氏が監修を担当したものだったそうだ。松嶋氏と細田監督は、金沢美術工芸大学の同期で、旧知の間柄であったことでコラボが実現した。
映画内では、架空の美術品「白梅ニ椿菊図」がストーリー上の重要な鍵となっている。映画ではその絵画をただ展示するだけでなく、展覧会のコンセプトから、展示の配置まで、松嶋氏の監修の元細かく作りこんでいる。コンセプトは、作者や制作年代が不明な美術品を集めた展覧会というもので、タイムリープという映画の題材に合わせて、時間を超越し物理的な距離を飛び越えるニュアンスを持った作品を選んだという。
今回、架空の展覧会をバーチャルで行うという試みが実現したのは、言うまでもなくコロナ禍によって、現実空間での展覧会開催が難しくなったためだ。東京国立博物館も予定していた展覧会の開催が出来なくなるなど、大きな打撃を受けた。そんな中、これからの博物館のあり方、新しい展覧会のあり方を模索する試みとして実現したとのことだ。
また、19日からの開催に先駆け、前日12月18日に松嶋氏と細田監督によるトークイベント「時をかける日本美術」の開催も案内された。松嶋氏は、細田監督のアニメーションには日本美術からの影響が数多く見られると語り、古来の美術と現代のポップカルチャーのつながりに気づいてもらえるようなトークを展開したいと意気込みを語ってくれた。