『サイバーパンク2077』から考える「バグを抱えたままリリースすること」の是非

『サイバーパンク2077』と「バグ」を考える

 12月10日に発売となった『サイバーパンク2077』の“不出来”が話題を呼んでいる。

 本稿では、『サイバーパンク2077』の実態を入り口に、今日のゲーム業界に蔓延る「未完成品のリリース問題」を考えていく。

不具合だらけで“未完成”と言わざるを得ない『サイバーパンク2077』

 冒頭で“不出来“と記述した『サイバーパンク2077』のインプレッションだが、日々SNSなどにアップされるユーザーレポートの大部分は、同タイトルのゲーム性や世界観ではなく、そのプレイ感を問題点に挙げている。特に家庭用プラットフォーム版において、不具合が頻発しているのだ。なかには気に留めるまでもない軽微なものもあるようだが、多くは「ソフトのクラッシュ」「NPC消失」「重要オブジェクトの欠陥」「操作不能」といった、進行に直接影響する致命的なものである。そのため、通常なら糾弾の対象となりえる「グラフィックの表示崩れ」「フレームレートの低下」「読み込みの長さ」といった不具合への批判がさておかれている現状だ。

 こうした不具合に遭遇したプレイヤー(遭遇していないプレイヤーは皆無の状況ではあるが)のその後を追うと、ほとんどが何かしらの対処をしながらプレイを続けているように映る。『サイバーパンク2077』は、UI/UXから受けるインプレッションが低調であっても、没頭できるだけのゲーム性・世界観を持っているようだ。プレイ感以外の部分のクオリティが素晴らしいとされているだけに、このような状況には残念と言わざるを得ない。しばらくは修正パッチの配信による“ゲームの完成”を待つ流れとなりそうだ。

オンラインアップデートの普及がもたらした利便性の代償

 近年のゲーム業界では、注目タイトルが時折不具合だらけで発売されては、不名誉な形で話題をさらうことがある。最近で言えば、『アサシン クリード ヴァルハラ』(20年11月発売)の例が記憶に新しい。多くの場合、こうしたタイトルはオンラインアップデートを繰り返しながら、数多の不具合を解消し、最低限のクオリティを担保する道を進むが、話題作であるがゆえ、発売日の時点でまとまったセールスを記録しているケースも多く、「不具合だらけでリリースされた」というファーストインプレッションを拭い去るのが難しい実態がある。どれほどのビッグタイトルであっても、リリース時からある程度のクオリティでなければ、高い評価は得づらい。“期待どおりの名作”となるには、「(致命的な)不具合なしでのリリース」が前提となってくる。

 そもそも長いゲームカルチャーの歴史において、ネット経由でのアップデートが一般的となってきたのは、ここ15年ほどのことだ。以前は「リリース時のクオリティ」が「最終的なクオリティ」であり、パッチによって修正を施すことで作品が完成を見るケースはまずなかった。バグはバグとしてずっと残っていくのが当たり前で、そのような背景があったからこそ、バグを愛すべきものとして捉えるサブカルチャーも生まれている。

 しかし、ネット経由でのアップデートが普及して以降、ゲームソフトは修正パッチの配信を前提に開発するものとなりつつある。1人の消費者として、そこにディベロッパー側の妥協を感じてしまうケースも少なくない。もちろんハード・ソフトの高性能化にともなったプログラムの複雑化も、不具合が頻発する理由に挙げられるだろう。しかし、昨今のソフトで見つかっているすべての不具合が、“どうしても避けられないもの”であっただろうか。

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