デジタルとリアルの融和で“最終的に残るリアル”とは? 街とテクノロジーの役割を考える

街とテクノロジーの役割を考える

デジタルとの融合で残るリアル 渋谷をエンタメとして届けるには

 天野からUIの話が出たところで、中馬が「インターネットがあって、デジタルのUIがカブってくると、そういったものが置き換わってくると思う。デジタルとの融合によって取り込まれた結果、最終的に残るリアルがどこなのかと再定義されるはず」と話を継いだ。

中馬:本当に必要とされるものは残るし、明らかにバーチャルだけでやれるものはコロナ禍を含めて加速度的に進んでいる。今の町は、人を待ち構えていて、出来上がったものを20年、30年使うフォーマット。人はリアルタイムにネットで触れ合いながら常にアップデートされている。町はハードだから対応できないということなんだろうが、ハードを置き換えられなくてもソフトでアップデートできるような構造の町になっていけば、たぶんライブスタイルの変化に合わせて町の形も変わっていくということであるとは思う。

天野:ウチは実際、鎌倉と秋葉原に会社があって、コロナ禍のピークに比べたら人は戻ってきてはいるが、今までのスタイルでお店をやっていた人は、ちょっと難しい状況になってきている。デジタルをうまく活用できるような分野のお店は、僕らも協力してデジタルならではの見せ方とかサービスを提案して一緒に作ろうとしている。ただそういう状況だからこそ相応の変化をしないといけないので、気持ち的にできない人は変化を恐れずに形を変えないといけないかなと思う。それに対して僕らIT企業でお手伝いできるものはしたい。

中馬:日本は便利な町、都市、国だから、中途半端に変わりにくいのが今の課題。1から作るのであれば、構造的に今の形にならない。結果的にそうなっているから、それを前提に町が作られていて、どうしても商圏が中央集権的に、リアルに効率性を求めると集中してしまう。バーチャルを組み合わせると分散できるから、中央集権にはならなくて、もうちょっとゆとりが出てくる設計になるはず。どうしても今の日本は古いフォーマットを前提にしながら、少しずつ変えていかないといけない。物理的なものを全て作り変えるのに時間がかかる。

 やっぱりエンタメはヨーロッパの都市部だったり、ニューヨークだったり、究極的に集積されたところに凝縮されて、アートも音楽も演劇も生まれている。となると、集積された結果の知能の蓄積がものを言う。アジアの中では日本が一番蓄積が多いわけで、エンタメの要素を入れながら、色んな産業をアップデートしていくというアプローチ。本当にそれができると、全てがゲーミフィケーションというか、もしかしたら日本型の次世代創造みたいなのができる気がする。だからエンタメの定義を狭く見ずに、むしろフォーマットとして見るようにすれば、ポテンシャルはあると思う。

 コロナ禍の今年は「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」が注目を集めることにもなった。終盤で長田は「バーチャル渋谷というわけではないが、文化が今まで生まれてきていたものが、これからさらにテクノロジーなど、国内ではなく世界を目指して活動していたりで可能性が広がってくるといい」と希望していた。

 それに対して天野は「仮想空間にそういう場が作れるので、必ずしもアメリカでないとトップのエンタメが作れないということにはならない。バーチャル渋谷というものを世界に示していければ、渋谷という町を世界に向けて届けられるコンテンツができ、エンタメとして届けることができる」、中馬は「日本で蒸気機関が生まれたとか電気が生まれたとかはないが、イタリア料理をアレンジしたら日本が一番うまいとか、そういうリミックスに長けたところはエンタメテックと相性が良いと思う」と話を終えた。

■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「激変!アニメーション環境 平成30年史+1」(著書)など。

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