『TVer』は大成功のさらにその先へーー新体制で目指す「パーソナルタイムシフト」戦略とは?
新しいTVer広告プラットフォームのセールス戦略
それから新しいセールス。これまで広告セールスは、5社でそれぞれやっていた。この1年、5社の在庫を一緒に売ってみるというトライアルをしてみたが、それを今回拡張させるつもり。在京5社、在阪5社、合計10社の在庫を共通化して、それに合わせたスポンサーの大口出稿を獲得することができないか。そしてTVerが持つ視聴データから、新しい広告商品を開発していきたい。TVerに放送のリソースを集めて、キャッチアップのエコシステムを構築できないかということを含めて、こちらで新しいセールスを構築したいと思っている。
キャッチアップの広告セールスは、実はキャッチアップ全部が在庫ということになっている。各局のオウンドメディアで流れているCMも、TVerやGyaOで流れているCMも、1つの在庫として捉えてもらえたらと思う。TVerのユーザー数は1900万を突破、再生数も他のサービスを含めると1億4000万以上になっているということで、広告メディアとしてはさらに強いものになっていると言える。この広告の特徴としては高い広告完了率で広告認知を表現できるようになっていること、テレビのコンテンツに付帯して流れている広告なので嫌悪感や違和感がなく受け入れられている状態であること、そしてコネクテッドTV、テレビへの配信も可能になっていることで、みなさんに新しい商品として紹介できるのではないかと思う。
また新体制への移行により、新しくTVer広告プラットフォームというものを作ろうということになった。これまで5社でセールスしていた部分は残しながら、放送局の在庫をまたがって株式会社TVerでセールスする体制を作ろうというのが大きな目玉。全てのメディアで流れるCMをTVerでセールスするということ。1つは昨年からやっているものをTVerPMP(プライベートマーケットプレイス)としてリニューアル、1つは今回新しく作るTVer広告というもの。TVerPMPはSSP(サプライサイドプラットフォーム)を内製してDSP(デマンドサイドプラットフォーム)事業者から発注されたもの、TVer広告はTVerが持っているデータから新しい独自の商品を作ってセールスする。TVerがオウンドで持つユーザー属性、コンテンツ、DMP(データマネジメントプラットフォーム)のうち、特にユーザー属性をビデオリサーチのデータとマッチングさせたところ、93.7%の正解率となった。同時にコネクテッドTVでも同じようなターゲティングが可能になる。これはなかなかないデータなので、この部分に関しては今後は強いポイントになるかと思う。
パーソナルタイムシフトが実現できるプラットフォームとして自分たちのサービスを拡張するという意味でいうと、来年の4月をメドに新しいUI/UX(ユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンス)をリリースしたいと思っている。まずは毎月2000万人のユーザーが見てくれるようにする。それを今年度内に達成したい。それとおそらく来年はどこかで、同時配信が始まるのではないかと思う。決めるのは放送局なので、どのタイミングなのか掴みきれないところがあるが、準備していきたい。またTVerのデータと地上波のデータとの連携もどこかで考えたい。
龍宝は講演の終盤で、東京オリンピックに関しても「TVerにとってジャンプアップの機会をもらえるので、行われるという前提で準備しようと思っている。テレビの視聴と、それを補完するキャッチアップでの視聴、もしくはライブ配信での視聴を強化して、こういうサービスがあるということを世の中の人にもっともっと認識してもらって、定着する機会を何とか有効に利用したい」と言及。さらに「北京オリンピックもあって、来年度は夏と冬のオリンピックが2回ある年度になる。ここで一気にユーザーを増やし、さらにこの1年で3000万に増やせないかと思っている」と期待していた。
■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「激変!アニメーション環境 平成30年史+1」(著書)など。