『ダビスタ』新作が予感させる“競馬ゲーム”の復権 ファンに愛されてきた人気3シリーズを振り返る
その名だけを残し、形骸化した往年の人気シリーズ『ギャロップレーサー』の存在
最後に、「ホースレーシング」というジャンルを確立したシリーズを紹介し、本稿を締めくくりたい。
『ギャロップレーサー』シリーズは、1996年に第1作が発表されたテクモ(現コーエーテクモゲームス)開発のジョッキーレースゲームだ。現在は同社とコーエーの合併にともない、『ジーワンジョッキー』シリーズと合流。ゲームデザインを刷新し、『チャンピオンジョッキー』の名で再出発している。『ギャロップレーサー』シリーズとして最後に発売されたのは、2006年の『Gallopracer Inbreed(ギャロップレーサー インブリード)』。10年の歴史のなかで8作ものナンバリングを発表した、往年の人気シリーズである。
『ダビスタ』が『ウイニングポスト』と比較されるように、同シリーズは『ジーワンジョッキー』と比較されやすい。そこにもまた、シンプルなゲーム性の『ギャロップレーサー』、リアリティとストーリー性の『ジーワンジョッキー』という構図がある。ちなみに『ウイニングポスト』と『ジーワンジョッキー』は、どちらもコーエー開発のタイトルだ。
現行シリーズの『チャンピオンジョッキー』においては、「両シリーズの融合」が売り文句として謳われているが、ざっくりとしたプレイ感は『ジーワンジョッキー』に近い印象がある。実質的に消滅してしまった『ギャロップレーサー』の復活を夢見るプレイヤーは、少なくないのではないだろうか。
実際にTwitter上では、最後の作品から15年近くが経った現在も、多くのファンが同シリーズの話題で盛り上がっている。検索エンジンのサジェストには、現行ハードでの新作や復刻を望んでいると見られる予測キーワードも登場するほどだ。しかしながら、ジャンルが置かれている状況や、『チャンピオンジョッキー』に『ギャロップレーサー』の名が冠されている状況を考えると、新作発売や復刻が実現する可能性は極めて低いと考えざるを得ない。
ともあれ、6年ぶりに動き出した『ダビスタ』の歴史に、競馬ゲームの再興を予感しているファンも多いはずだ。私も1人のファンとして、同ジャンルの復権を心より願っている。
その先に『ギャロップレーサー』の復活という淡い期待を描きながら。
■結木千尋
ユウキチヒロ。多趣味なフリーライター。
執筆領域は音楽、ゲーム、グルメ、テクノロジーなど。カルチャー系を中心に幅広いジャンルで執筆をおこなう。
人当たりのいい人見知りだが、絶対に信じてもらえないタイプ。Twitter:@yuuki_chihiro