PS5が転売へと投じた一石 “購入者の選別”はマーケットのスタンダードとなるか

 9月17日、満を持して発売日と価格が発表となった『PlayStation 5』。18日から始まった予約では、各販売サイトにアクセスが殺到。連日の混乱が界隈以外でもホットトピックとなっている。

 本稿では、「『PlayStation 5』激動の1週間」へとフォーカスし、巡る動きを追っていく。市場を悩ませる転売の撲滅に、いま一石が投じられた。

ついに全容が明らかとなった『PlayStation 5』

(日本語)PLAYSTATION 5 SHOWCASE

 これまでスペックなどはつまびらかとなっていたものの、肝心の発売日と価格が未発表だった『PlayStation 5』。フリークが動向を注視するなか、新たなショウケースの開催がアナウンスされたのは、今月12日のことだった。

 かねてから同ハードは、ホリデーシーズンを目掛けてのリリースが公表されていた。“Xデー”を約2か月後に控え、ここで全容が明らかになると見る向きは多く、ショウケースには自ずと大きな注目が集まった。

 事前に告知されていたイベント内容は、ローンチ期に発売される目玉タイトルの紹介だったが、やはり大方の予想どおり、詳細が発表となる。

「発売日は11月12日。価格は39,980円~」

 間近に迫った発売日・想定を下回る価格に驚きの声を上げたのは、私だけではなかったはずだ。

予約開始とともに始まった仁義なき争奪戦

 ショウケースの翌日には、各所で予約受付がスタート。その中心となったのは、Amazonや楽天ブックスといったゲームを取り扱う大手ECと、ヤマダ電機やビックカメラ、ノジマといった大手家電量販店のオンラインショッピングだ。

 前者においては、早いもの勝ちでの予約販売がおこなわれ、後者においては、一定期間内に手続きをおこなった応募者から抽選で予約を受け付ける方式が採用された。一斉開始時刻となった午前10時には、すべてのサイトがアクセス過多となり、503エラーが多発。誰もが想定した展開で『PlayStation 5』の争奪戦が幕を開ける。

 先着順での受付となったAmazon・楽天ブックスでは、まともにサイトが表示されないなか、数分で売り切れる事態に。Amazonマーケットプレイスには、20万円以上の高値でさっそく転売される同ハードが散見された。抽選倍率を確認できるシステムだったヨドバシカメラ(19日午前10時より予約受付を開始)の状況を参照すると、受付終了ごろで通常版が約40倍、デジタル・エディションが約90倍の競争率となっていた。後発の予約申込や発売日以降の出荷分については、抽選漏れした応募者のほか、新規希望者の参戦も考えうる。しばらくは熾烈な争奪戦が続くに違いない。

ようやく登場した明確な転売対策と、一方で浮き彫りになる消費者のモラリティ

 こうしたハードの争奪戦は、もはやゲームカルチャーの恒例行事となっている。最近では今年4月以降、コロナ流行などの影響で『Nintendo Switch』が売り切れ続出の大争奪戦へと発展した。同ハードについてはそれから約半年が経った現在でも、新品を自由に購入できない状況が続いている。

 一方、定期的に開催されるこの“お祭り”とセットで語られるのが転売の問題だ。上述した今回のケースでも、転売業者による不当な競争への参加が明るみとなった。パブリッシャー・消費者と転売業者の間でことあるごとに繰り返されてきたこの問題の解決が、ゲーム分野における目下の重要課題となりつつある。しかしながら、現在進行形で展開される『PlayStation 5』の争奪戦においては、対決の終止符へ向けていよいよ戦局が動き出したと言えそうだ。

 18日午前10時の一斉開始時刻とともに予約受付をスタートさせたビックカメラでは、同グループの会員であることと合わせ、過去2年以内の購入歴が申し込みの条件とされた。対象となる期間は予約受付の直前となる2020年9月17日までで、概要の発表タイミングを考えると、後出しでの条件クリアは不可能だった。つまり同グループでは、既存の顧客にしか門戸を開放せず、転売業者の締め出しをおこなった格好だ。

 また、おなじく同時刻から予約受付を開始したジョーシンでは、メールマガジンの購読と合わせ、ゴールドステージ以上の会員ランクを申し込みの条件とした。ゴールドステージとは、直近1年間に総額3万円以上の購入歴があるユーザーの分類だ。つまり同社もビックカメラと同様、上顧客のみに限定して予約を受け付けたことになる。紹介した2社はあくまでも一例で、このほか多くの販売店・サイトが類似する条件を応募の前提とした。

 しかし他方では、Amazonや楽天ブックス、ヤマダ電機などが、特筆なしに予約を受け付けており、結果として不当な申込みが横行している(もしくは、しかねない)実態もある。なかには条件の緩い販売サイトで記念的に抽選へと参加する者もおり、転売という営利目的ではないにせよ、切望するフリークの元へと届きづらくなっている点を見逃してはならない。

 消費者側のモラルが問われる争奪戦や転売の問題。ミスマッチの解消へ向け、少しずつ動き出してはいるものの、まだまだ完全解決には時間がかかりそうだ。

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