ゴッドスコーピオンが語る、『デススト』化した世界で変わりゆく「都市や空間に“XRの魔術”をかける」意味

コロナ禍で変わる都市とXRの関係性

「一般化に向けて“AR/MRにおける公共とは何か”という議論は避けて通れない」

ーーコロナの影響でイベントが「できない」というところから、オンラインであれば「いつでもできる」という感覚も生まれつつあるかもしれません。

ゴッドスコーピオン:人と集うという体感的な共同空間をどう腹落ちさせるか、してもらうか、というところでトライが続いているのだと思います。いずれにしても、店舗はECサイトやデリバリーのサービスを持っていないと厳しい、という認識が広がったように、イベントや音楽ライブについても、オーガナイザー側に「配信できるようにしていかないといけない」という意識が必然的に生まれましたよね。外食産業を見ても、もともとデリバリーが元々できていた形態においてはダメージが少なく、マクドナルドなどはコロナ禍の影響を低く抑えられたことが報じられています。他方で、“現場”でのサービスを重視したレストランなどは非常に厳しい状態になっていて。友人でも店を閉めた人が何人もいてとても悲しいです。

 とにかく、物理的に人と会う/人が集まることが本当に減っていて、本当に『DEATH STRANDING』(※小島秀夫監督によるアクションゲーム。人と人、都市と都市のつながりが失われた世界で、主人公のサムが配達人として“荷物”を運び、それをつなぎ直していく)のような世界観に現実が変化したのだな思います。ゲームのオンライン要素として、孤独に荷物を運ぶプレイヤーに対して、他のプレイヤーが応援のメッセージを残せる機能があり、僕はこれが素晴らしいと思って、オマージュとして弊社の入り口の螺旋階段を登ると鼓舞されまくるARを作ってみたりもしました。いまは出社するだけで特別なことになってしまったので。

Ganbattekudsaai Moriaura Entrance

 また同じように、会社のビルの屋上に、あるARを展開したんですよ。弊社のビルのオーナーの清水晴三さんがブラジルに生息するライオンタマリンという絶滅危惧種の猿の繁殖支援活動を昔していて。実際にブラジルでの繁殖が上手くいかないようであれば、猿を繁殖させるための施設が必要だとビルを作ったそうです。同時期に晴三さんがブラジルで行っていた植林が成功し、猿をビルで飼育する必要がなくなったという歴史が弊社のビルにあったそうです。晴三さんが80才の誕生日にビルの屋上にいつでも訪れることが可能なAR動物園を用意したら、すごく喜んでくれました。これも一例ですが、都市にAR、MRを重ねて、きちんと使えて運用できるようにする、というAR/MRの建築、現実の彫刻に興味があります。将来的に、こういうことが当たり前になっていくだろうと思うので。

Harezo Shimizu Forest in Shinjuku

ーー都市や空間自体をARで気軽に作り変えたり、情報を重ねたり、ということは、どれくらいで可能になりそうでしょうか。

ゴッドスコーピオン:誰もが自由に空間を編集することができるようになるためには何段階かのフェーズがあると思います。例えば現状でも「STYLY」を使うことにより自由かつ簡易にサイトスペシフィックなAR空間を作り発信、共有ことができます。その次の段階では現実の空間情報に合わせて動的に変異し続け環境が随時、反映共有されるマップデータがどのように形成、共有されていくかという課題があります。

 将来的な都市、我々の生活世界におけるAR空間は大きく2つあると思っています。1つはARグラスをかけた際グラスに搭載されたAI側が環境、状況毎の各人のオントロジーを理解し状況に合わせ情報を提供する各個人の主観的空間。これは先日Facebookが発表した「Project Aria」でヴィジョン、今後の研究の在り方について語られましたが、我々の知覚、環境把握を助ける主観的空間を形成します。そしてもう1つは既に現実にある構造物のように都市、環境、モノにある種恒久的に纏う空間。こちらはある種、見立て、付喪神的な形で現実のオブジェクト環境に対しオーダーメイドで作られるものになると思います。

 社会が一般的にグラスを付ける世界に突入するためには、“AR/MRにおける公共とは何か”というような議論は避けて通れません。先の『MR CITY』のように、街の中に情報を出し過ぎても使いづらいということも都市に実際に実装してみて初めて分かることでした。もっとも、何はともあれ作って運用してみないことにはわからない、という部分も大きいと思いますが。

 また、同時により気軽に使えるAR/MRグラスが登場し、広く普及する必要があります。ユーザーの参入を加速させるキラーコンテンツをどう打ち込むか、というところだろうと。ARでは既にありますが『ポケットモンスター』や『Minecraft』のようなゲームがMRグラスを使った街の中で楽しめるコンテンツとして出てきたら、一気に状況が変わるでしょうね。

ーー新たな技術を広く浸透させるには、やはりゲームが早いと。

ゴッドスコーピオン:そうですね。そこから社会のインフラとして、いかに公共的な仕組みを作っていくことができるか。それによって、AR/MR技術はゲーミフィケーション、日常の景色をデザインし数多くのサービスが提供されていく可能性があります。「街の掃除をしたら1ポイント」とか、良くも悪くも人の行動を細かくポイント付けしていくこともできると思います。プライバシーを含めテクノロジーには往々にして良い面と悪い面があるので、あとはどう使っていくか、社会からどういう受け入れ方がされるのかというところです。

ーーMR技術はゲームのようなエンターテイメントで広がり、それがインフラとして人々の日常にも作用していくだろうと。

ゴッドスコーピオン:最初はゲームやアートやエンターテイメントとして世に出たものが、我々の現実自体に強く作用する形になっていった時、どう日常的に生活の中で使われるものにしていくのか、ということはこれからある話だろうと思っています。Covid-19以降、社会的な活動を考えてもZoom含めリモート、ヴァーチャルを使ったイベントが当たり前になってきた中で、テレイグジスタンスなテクノロジーが早回しで世の中に浸透していっている感じはしますね。



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