「ほどよく難しいゲーム」を作り出すゲーム 『タケシとヒロシ』の斬新なシステムを紹介

「ほどよく難しい」を作るゲームの斬新さ

 2020年8月26日、オインクゲームズは『タケシとヒロシ』のNintendo Switch版をリリースした。本作はボリュームこそ控えめではあるものの、”ゲームをほどよい難易度に調整しなければならない”という斬新なシステムが目を引く。今回は実際に本作をプレイしたうえで、主にシステム面からその面白さを紐解いていく。本稿は『タケシとヒロシ』に関する軽度のネタバレを含むため、未プレイの方は注意して読んでいただければ幸いだ。

”難易度”に対して絶妙なバランス感覚が求められる珍しいシステム

 本作は病気がちな弟「ヒロシ」のために、兄の「タケシ」が自作したゲーム『マイティー・ウォーリアー』をプレイさせるという構図になっている。『マイティー・ウォーリアー』は、勇者になって次々に現れるモンスターを倒していくというシンプルなRPGだが、実はまだ“完成”していないのだ。未完成の状態でヒロシに見せてしまったため、プログラムを組めていないモンスターの配置などを、タケシが操作して補うという設定になっている。

 この設定を聞いて、『勇者のくせになまいきだ』を思い出す人がいるかもしれない。確かに、本作はプレイヤーがダンジョンを構築して勇者打倒を目指すあのゲームに似ている部分もある。しかし、『タケシとヒロシ』ではあくまで”弟を楽しませること”が目的となっているのだ。弟を心から楽しませるためには、ゲームを簡単すぎるものにしてもいけないし、反対に難しすぎてゲームオーバーになってもいけない。そのため、弟が操作する勇者を倒さないよう、程よいバランスを考えながらモンスターを配置する必要があるのだ。

 以上の理由から、本作でなにより重要なのはヒロシの「たのしさ」を示すゲージだ。5回のラウンドを突破するまでにこちらのゲージが目標値に達していれば、ステージクリアとなる。「たのしさ」は勇者のHPが低いほど上昇する「ドキドキ」の数値に応じて加算されていくため、できるだけぎりぎりの攻防を繰り広げることが大切だ。かといって、調子に乗っていちどにたくさんのモンスターを配置すれば、あっという間にゲームオーバーになってしまう。このあたりは絶妙なさじ加減が求められる。

 また、ひと癖あるシステムを採用している一方で、さまざまな要素をアンロックしていくというゲームならではの楽しみも用意されている。本作で設置できるモンスターは、最初は3種類しかいない。しかし、ステージをクリアするごとに設置できるモンスターの種類が増え、戦略の幅が広がっていくのだ。また、勇者用のコマンドとして、「次の攻撃を必ず回避する」「次の攻撃が必ずクリティカルになる」といったものも解禁されていく。あの手この手を駆使して、弟が緊張感を味わいながらゲームを楽しめるように導いていくことになる。

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