人気クリエイター元バディが語る、UUUMの「クリエイターマネジメント・サポート」論
伸びるチャンネルの共通点は「熱い思い」と「続けること」
小俣さんは、クリエイター発掘育成を担当していた2016年、1年間で約2万チャンネルを視聴したという。YouTubeの「急上昇」タブを眺め、一番興味がない、観たいと思わない動画を閲覧し、またその関連動画から一番興味のない動画を閲覧し……と、その行為を毎日繰り返した。普段なら観ない動画を観ることで、「自分は全然観たくないこの動画が、なぜこんなに観られているのか?」と問う癖がつき、それがインプットに繋がるからだ。そうしたインプットの積み重ねが、人気クリエイターやチャンネルの発掘や育成に繋がったのだろう。
先述の通り、小俣さんは様々な人気クリエイターの発掘・育成を手がけてきた。現在チャンネル登録者数430万人の水溜りボンドに小俣さんが出会った当初は、登録者数わずか30人だったという。
――まだまだ登録者数の少ないうちから、現在の人気チャンネルを発掘されてきました。「伸びるチャンネル」の共通点はなんだと思われますか?
小俣:トップオブトップのレベルまでいくには「生まれ持った才能」というのも正直あると思いますが、「YouTubeで食べていく」というラインまでは、誰でも行けると思っています。
そのためには、やっぱり「続けること」が最も大切なんです。大体登録者数が伸びない人って、いい動画を作るのに月に1本しか上げないとか、ムラがあるんですよ。水溜りボンドは何年も毎日投稿という極端なことをやっていますが(笑)、そこまでではなくても、ある程度まで行けばマラソンのように長く自走できるようになる。そうしてペースに乗るまでは、いかに全力疾走を続けられるかです。
また人気クリエイターに共通しているのは、「この世界で生きていくんだ」というような、熱さを感じる点です。まだチャンネル規模がほんとうに小さかった時期から、そういう熱さを持っているんです。会社に就職して普通に会社員として生きていく道もあるのに、学生のころから「YouTubeで頑張っていく」という熱い思いを持っていた。そういう思いがあるからこそ続けられるし、だから伸びるんだと思います。
逆に、まだ大学生のクリエイターで「自分は大学卒業するまでの間だけYouTubeやるって決めているので、やってもあと2年です」みたいな人もいたりするんですよ。そういう時はそれはそれで逆にこっちが燃えます(笑)。「大学卒業しても続けたいと言ってもらうぐらいまで伸ばしたい!」と熱くなったりしますね。
未来のクリエイター、未来のバディが心がけるべきこと
――いま、そうした「熱い思い」を持ってクリエイターを目指す若い世代の方も多くいらっしゃると思います。ただ、動画市場は拡大して競争はかつてより厳しくなっていますよね。そんな中で、クリエイターマネジメントを手掛けてきた小俣さんの目線でアドバイスをお願いします。
小俣:講座の中で話しましたが、動画を作る人には「クリエイタータイプ」と「アーティストタイプ」がいます。
「クリエイタータイプ」は、世の中の人が見てくれるもの、求めているものをつくって供給し続けるタイプ。「今これが流行っているから、これをやったらたくさんの人が喜んでくれるからこれをやろう」と思う人。
一方「アーティストタイプ」は、いい意味で、自分がやりたいこと、見せたいものへのこだわりがとても強いタイプ。
それらのタイプが、ごちゃごちゃになっていってしまう人が多いです。「自分は『アーティストタイプ』だ」と思ってスタートした人が、なかなか観てもらえないという状況に直面したとき、急に視聴者に寄せるなど、ブレてしまったりする。そうならないように、自分がYouTubeでの活動を通じて将来なりたい、確固たる姿をイメージすることが大切です。そして、そこに向かうまでに、どういうルートを歩むべきなのかを考えること。
「どうして自分はYouTubeを始めたのか?」という問いと、その期限を設定して、そのゴールに向かっていくようにしないと続きません。動画の中で何をするかはなんでもいいと思うので、そのゴール設定を明確にすることが重要だと思います。
――今回の講座に出席していた方たちのように、クリエイターではなくマネジメントの側から、動画に携わる仕事がしたいと思っている方も多くなってきています。そうした方たちが何を心がけるべきか、アドバイスをお願いいたします。
小俣:僕がUUUMに入社した時はそうではなかったですが、これからこの業界に入ってくる人は、世代的にクリエイターをスターとして見る人ばかりだと思います。クリエイター側も、10年以上YouTubeやっているベテランが多くなってくる。ただ、だからといってそこで委縮してしまうと、ただの“御用聞き”になってしまいます。
「なんでも聞きます、徹夜してでも動きます」という熱意も大事ではありますが、それ以上に、コンサルできる、彼らを導いていけるような、自分の頭で考える人であることが必要です。彼らが目指すもの、なりたい姿をきちんと聞いて、定められた期限の中で「自分だったらこういうストーリーでこれを達成する」と考えられる人であってほしいです。ネットで調べればすぐに答えが出てくるいまは、「どうすればいいですか」と聞く若い人が多くなっている気がしています。そのようにすぐに人に答えを求めるのではなく、自分だったらどうするか、仮説を立ててすぐに実行できる人が理想ですね。
■バンタンクリエイターアカデミー
https://creatoracademy.jp/