スマートウォッチがうつ病治療の鍵になる? 米大学とAppleが共同研究開始

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校は8月上旬、Appleのスマートウォッチをうつ病や不安障害の診断・治療に適用させる共同研究を開始したと、公式サイト上で発表した。

 この数年でがんや心臓病などの診断精度は飛躍的に向上したが、うつ病の診断をめぐっては21世紀を迎えた今でもあまり進歩していない。うつ病の患者は世界で3億人を上回っており、そのうち100万人が自殺により命を落としているという現状を危惧し、対応に乗り出したのがカリフォルニア大学ロサンゼルス校とAppleの研究者らだ。

 現時点において、うつ病の治療はほぼ患者の主観的な回想に基づいており、それは医師による診断が難航する要因でもある。今回の研究の狙いは、うつ病を誘発し得る遺伝的および環境的因子を特定し、うつ病患者の脳や身体の中で起こっている生物学的変化を理解するとともに、うつ病や不安障害の症状と関係のある身体的活動や睡眠状況、心拍数、日常の行動といった客観的な指標によりうつ病・不安障害の診断方法を確立することにある。スマートウォッチが常に肌身離さず携帯するアイテムだからこそ、その強みを活かし、うつ病を思わせる兆候が現れた時点で医療従事者に通知し、うつ病の発症を早期の段階で阻止することが可能と考えたようだ。

 カリフォルニア大学の研究グループはすでに被験者150名を巻き込み臨床研究を開始。2021年から2023年までの間に数千人規模の臨床試験を展開し、3年をかけてうつ病・不安障害の客観的指標の確立を目指すとしている。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校の生物学者であるジーン・D・ブロック学長は、「神経科学者として睡眠に関する研究に携わってきた身として、今回の共同研究には非常に興奮させられるものがある。メンタルヘルスの研究が一歩前進することを期待している」と言及している(参考:https://newsroom.ucla.edu/releases/ucla-launches-major-mental-health-study-to-discover-insights-about-depression)。

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