TikTokクリエイターをInstagramが高額オファーで引き抜き 各国で強まる規制に懸念も

 Instagramが、中国系企業「ByteDance(バイトダンス)」が運営するショートムービーアプリ、TikTokの人気クリエイターの引き抜きを画策していると『ウォール・ストリート・ジャーナル』が報じた。Instagramは、今月にもショートムービーシェア機能「Reels(リール)」をリリース予定で、クリエイターを囲い込むことでTikTokからシェアを奪いたい考えだ。

 報道によれば、「Reels」のみに動画を投稿、もしくは先行公開することを約束したクリエイターには多額の契約金が支払われると見られており、その額は数十万ドルにのぼるという。

 これに対して、TikTokもクリエイター支援を目的とした2億ドルのファンド「TikTok Creator Fund」を設立すると発表した。18歳以上で、一定のフォロワー数をもち、TikTokのコミュニティガイドラインを遵守したオリジナルコンテンツを投稿しているクリエイターが対象だという。米国を拠点とするクリエイターは今月から申請が可能で、来年から資金を受け取ることが可能だそう。

 しかし、米中の対立が激化する中で、TikTokに大きな逆風が吹いている。米トランプ大統領は7月31日、「TikTokをアメリカ国内で禁止するつもりだ」と記者団に述べた。中国政府へ個人情報が流出するのを防ぐためだとしている。一時は米MicrosoftがTikTokの米国事業を買収するとの報道もあったが、トランプ大統領は米国企業の事業買収を支持しない考えを示した。これに対し、「ACLN(アメリカ自由人権協会)」が、Twitterで「多くの米国人が利用するTikTokなどのアプリを規制することは、表現の自由が犯される危険性がある」と懸念を示すなど、議論を呼ぶ展開となっている。

 同様に、中国系IT企業の締め出しはインドでも行われている。6月、両国の国境付近でインド兵士20人が死亡する衝突があったことを発端に、インド国内では反中感情の高まりを見せていた。そんな中、インド政府は6月29日、TikTokや巨大SNS「Weibo(ウェイボー)」、メッセンジャーアプリ「WeChat(ウィーチャット)」を含めた、59の中国系サービスを禁止すると発表した。インドのインターネット普及率は人口13億人に対して40%とも言われており、超巨大ITマーケットからの排除は中国系企業にとって大きな痛手となるだろう。

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