bandcampは”ストリーミング時代の英雄”なのか 再考される”音楽を所有する”ことの意味

 また、ストリーミングと比較して、コミュニティとのつながりが重要視されるbandcampの性質は、アーティストやレーベルによるコミュニティ支援を呼び起こすことに繋がっている。特に還元デーでは、レーベル側が本来受け取る収益分もアーティストに還元されたこと以外に、チャリティとして各種支援団体に寄付されるなど、コミュニティを支援するために活用されている。

 こういった社会貢献につながる要素が強いのは、最近のbandcampにおいては特に目立つ部分だ。コロナ禍におけるアーティスト還元に加え、昨今の黒人差別反対運動に対する連帯も一早く反応を見せており、毎年、アメリカの奴隷解放記念日である6月19日の売上をNAACP Legal Defense Fundに寄付することを発表したことは記憶に新しい。黒人差別反対運動に関しては、音楽業界でも様々なレーベルや音楽プラットフォームが連帯を示す動きが今年6月の「Black Out Tuesday」以降広がりを見せており、こういった社会問題の解決を目指す動きに連帯していくことはいま、多くの企業が果たすべき責任だと考えられている。

 もちろん、bandcampにもそういう意図はあると考えられるが、そもそもbandcamp自体「アーティストの音源やグッズを購入することで、ファンがそのコミュニティの一員になって支える」という思想があり、この連帯の声を無視することは決してできないはずだ。また、アーティスト還元に関しても音楽業界、ひいてはbandcampのビジネスを支えているのは、アーティストたちであり、彼らの苦境も同様に無視することはできないというのがbandcampの考えだろう。

 そういった音楽ビジネスを支えるコミュニティとつながり、支援することがbandcampの根幹にあり、それをファンとともに共有していくためにbandcampは”音楽を所有する”ことを重要視している。そして、このコミュニティに対する貢献こそがいま、bandcampが”ストリーミング時代の英雄”と呼ばれる理由のひとつになっている。

 現代の音楽業界では、TikTok経由のバイラルヒットやYouTube経由のアルゴリズムによるヒットなど、音楽の広がり方も新しいフェーズに突入している。そこには音楽を共有することで遊ぶという新しい体験のあり方が見受けられるが、Ethan Diamondは、「トレンドやアルゴリズムにひっかからないオルタナティヴなアーティストたちにとって、Bandcampが生命線になっている」と語る。そして、その生命線は、音楽を所有するということに繋がっており、bandcampはその価値を問い続けている。

 冒頭で伝えたとおり、コロナ禍をきっかけに今後、ストリーミングサービスの需要は高まっていくだろう。しかし、同様にコロナ禍をきっかけに音楽を所有することの意味も改めて再考され、浸透していくはずだ。この2つに関してどちらが正しいということはないが、どちらもコロナ禍以降の音楽体験のあり方の潮流であり、それが同時進行している時代が2020年だと言えるだろう。

 なお、bandcampのアーティスト還元デーは、業界の期待に応えるように今月、新たに年内中、毎月第一金曜に実施されることが発表されている。

■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69

〈Source〉
https://www.bcnretail.com/market/detail/20200415_167796.html
https://daily.bandcamp.com/features/bandcamp-covid-19-fundraiser
https://daily.bandcamp.com/features/update-on-bandcamp-fridays
https://www.theguardian.com/music/2020/jun/25/bandcamp-music-streaming-ethan-diamond-online-royalties

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