劇団ノーミーツ主宰・小御門優一郎が語る“オンライン演劇の可能性” 「この状況だからこそ生まれる物語がある」
「次回公演は“オンラインコミュニケーション”がテーマ」
――公演は生配信で行い、アーカイブも残さないという、限りなく「本物の演劇」に近づけた体制が素晴らしかったですね。
小御門:演劇特有の“一回性”の魅力はしっかり出ていたなと思います。実は細かく見るとトラブルとかも結構起きていて、でも演劇はその緊張感あってこそのものなんですよね。配信を見ていただいたある俳優の方には「演者の目がちゃんと演劇っぽかった」と言ってもらえて、「いつトラブルが起きるかわからないなかで、それにいち早く対応しないといけないっていう目をしながら演技をしていた」と。確かにその緊迫感は役者それぞれにあったかもしれないですね。
あとはチャット欄がいい働きをしていたなと思っています。画面上でいま起きていることに対してのリアクションが逐一テキストとして可視化されていたので、「私たちはいま同時に同じものを観ている」という感覚を持ちながら観てもらえたのかなと。演者側としても、なんなら普通の演劇よりも観客のリアクションがわかりやすくて嬉しかったという声もありましたね。
――そうした「Zoom演劇だからこそのよさ」は他にありましたか?
小御門:あらかじめ人と人との間にある“隔たり”が可視化されているのがいいなと思います。Zoomでは画面越しだしラグがあるし、相手のことを見ながら喋っても目が合うことはない。でもこれって、リアルの世界でも案外変わらないと思うんですよね。人と人の間にはやっぱり隔たりがあると思うんです。めちゃくちゃよく話す友だちでも恋人でも、真に分かり合えているわけではないと思う。そうした“コミュニケーションの不完全性”を、Zoomは強調してくれる媒体なのかなと。「分かり合えてると思ってたけど、実はそうじゃなかった」っていう展開をリアル演劇よりも映えさせてくれるんじゃないかなって思います。
――次回公演もすでに決まっていますね。7月23日~26日の4日間で行われる第2回長編公演『むこうのくに』は、どんな作品になる予定ですか?
小御門:次回公演は“オンラインコミュニケーション”がテーマです。時代設定も『門外不出モラトリアム』からはちょっと時間を進めて、少しずつコロナの状況が回復してきている世界。なかには元の生活に戻っている人もいる一方で、「このままオンラインコミュニケーションでもいいよ」と考える人もいる。最近は人種差別問題が取り沙汰されていますが、ネットを噛ませたほうが人それぞれの差異をなくせるんじゃないか、という考えも出てきます。そして、「もしかしたら理想的な国家を作るうえではオンライン上のほうが向いてるんじゃないか」と思考する人々が集まって国が作られようとするんですが、それに対していろんなスタンスの人が出てきたり、さて一体どうなるか……、という話を想定しています。
劇団ノーミーツは当初、緊急事態宣言が明けたら解散してもいいんじゃないかと話していたんですが、コロナがそう簡単に終息するわけではないし、エンタメ業界もすぐには元どおりにならないということがわかった。だからオンライン上でもまだまだ語るべき物語やトライできることはあると思うので、面白いことは継続していきたいなと思っています。
――最後に、映画・演劇業界で働きながら劇団ノーミーツを主宰する小御門さんの視点から、エンタメ業界のこれからの展望についてお聞かせください。
小御門:リアル世界での興行を成立させるのは、やはりまだまだ難しい部分があります。それでも、なんとか元どおりになるまで何かしら行動をし続けないといけませんよね。Zoom演劇をしていると、劇場の暗転する瞬間がめちゃくちゃ恋しくなる瞬間があります。周りが真っ暗になって、最初の音楽がかかってきて舞台に灯りがともったら、ファーストシーンが展開されていく。そうした劇場の素晴らしさを取り戻すことを常に考えながら、その未来に向けて今できる活動を続けていきたいと思っています。
■公演情報
劇団ノーミーツ 第二回長編公演『むこうのくに』
日程:7月23日(木・祝)〜7月26日(日)
▼詳細・チケット購入はこちらから
http://no.meets.ltd/mukounokuni/