ライブ会場の熱量をオンラインならではの体験に 『SPWN』など手がけるバルス・林範和に聞く“配信ライブの課題”

ファンの熱量をアーティストが認識するための“3つの方法”

――実際、VRライブやオンラインのライブでは現実ではできない体験が可能になる一方、現実のライブにあるような熱量を体感することは、まだなかなか難しい側面がありますね。

林:たとえば、ニコニコ動画の弾幕もそうですが、あれはたくさんコメントが流れることで、「こんなにたくさんの人が観ているんだ」ということが実感できるシステムですよね。それと一緒で、ユーザーさんがたくさん観ていることで演出が変わるような仕組みをつくっていけば、「みんなで集まっている」「みんなで観ている」ということが感じられるかもしれません。つまり、今こうして話しているZoomのように、誰かが交互に喋っていく(アクションを起こしていく)という仕組みではなく、たとえば1万人で一緒のものをつくっていく、という体験の方が楽しいと思いますし、その辺りに、僕らが配信プラットフォームだけではなく、ARを活用したイベントをやってきた経験も活きてくるんじゃないかと思っています。

 そもそも、VTuberはライブの有料配信の経験が豊富なぶん、オンラインイベントにはアドバンテージを持っているように思います。ファンの熱量をアーティストが認識するためには、現状大きく分けて、3つ方法があると思っています。ひとつはユーザーのみなさんの「コメント」ですね。オンラインイベントでは、コメントをどう拾って、どう巻き込んでいくかを、演出とどう繋げていくのかが大切です。僕らの過去の事例で言えば、マスコットの名前をみんなが打つと、それがアーティストのいるステージに降ってくる、ということもありました。この時は短時間で数万件の名前が打たれました。そして2つめは、AR的な演出をどう使って、みんなの体験を“ひとつ”にするか、ということです。そして3つめが、オンラインではグッズを使いづらいですから、それに代わる収入源として、「投げ銭」を考えることだと思います。VTuberにはファンの方が投げ銭を積極的にする文化がありますが、一般的なアーティストはまだまだ、投げ銭に抵抗がある人も多いです。ただ、リアルでのライブのように仮にチケットを5000円で売って、グッズを5000円分買ってもらうとしても、「ペンライトを家で振るか」と言われると、そうではないですよね。投げ銭は1000~2000円ぐらいでペンライトを買って盛り上がるのと同じように、オンライン上でファンが一緒に盛り上がれる方法のひとつなので、それをどう使えばいいか、という部分は、僕らも大事に考えていきたいと思っています。

――なるほど。オフラインだからこそ楽しめる体験を、オンラインだからこそ活きる体験に置き換えていく、ということですね。

林:VTuberとは違う事例ですと、BS-TBSさんがやっている『うち劇』という朗読劇を現在「SPWN portal」で配信しているのですが、その役者さんにお話をうかがうと、通常の舞台と違って、配信だと顔のアップになるので、顔の細かい表情までがお客さんに伝わるため、より顔の表情をつかって演技するなど「意識することが変わってくる」という話をされていました。そんなふうに、オンラインでできることを考えることで、その分野の新しい楽しみ方が加わるかもしれません。また、BOYS AND MENや祭nine.をマネジメントするフォーチュンエンターテインメントさんも「SPWN portal」を利用し配信してくれているのですが、そこでもライブ配信ならではの魅力が日々生まれています。制約というのは、新しいことが生まれるチャンスでもありますから「ただ配信します」ではなく、「こうすればもっと面白くなる」ということを、色々な方と話し合えるのは、僕らにとってもプラスだと感じています。

 そして、これはライブハウスにも言えることだと思います。今はライブがなくなってしまい、ライブハウスの方々は無観客でライブを開催していますが、実はその際に、「SPWN portal」のシステムを導入してもらうことも進めています。僕らとしても、そうやってライブハウスの方々と繋がることができると、今後もっと様々なライブのイベントをできるような接点になるかもしれませんし、そこから何か新しいライブの楽しみ方が出てくることもあるかもしれません。例えば、ライブハウスで配信ライブをやることで、無観客の客席も生かした演出をしていくと、「そもそもステージの正面ってどっちなんだ」という考え方に変化が生まれたりするように思います。

(後編:【オンラインイベント開催にあたり、注意すべき“権利の問題”は? バルス・林範和&弁護士・照井勝に聞いた】へ続く)

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