『未来少年コナン』の再放送を機に比較する“役職”の昔と今 クレジットの内外に見える業界の慣例

アニメにおける撮影とは? クレジット以外にも見られる慣例

 デジタル化といえば、実写はともかくアニメで気になる役職として、撮影もあるかと思う。コマ撮りなら実機のカメラを使用する様子を思い浮かべやすいだろうが、アニメで使用する機会となるとロケハンやビデオコンテなどのプリプロ、もしくはモーションキャプチャーやロトスコープなど実写から素材を用意する場合になる。

 今でも実機のカメラを使用してやってみることはできなくもないが、アニメにおける撮影は、実質的にAfter Effectsを使用したコンポジットと呼ばれる作業を意味している(3DCGではNukeなども使用する)。作画や美術などの素材が揃った後で、それらに効果などを加味して合成する作業のことだ。

 先に境目を一元化できないと記したものの、クレジットの外側では、業界別でハッキリしている慣例も残っている。その中には「放送」もある。新番組が発表されると、作品の公式サイトでスタッフやキャストを確認する人も多いだろう。しかし、どの公式サイトも「放送」と書かれているが、「放映」とは書かれていない。

 基本的にテレビ業界では「放送」で統一されているはずである。とはいえ、その理由についてハッキリした説明がなされているわけでもない。他のメディアでは生ではない番組を「放映」としているようにも見えるが、ニュース速報のテロップ表示など、リアルタイムで番組を管理しているため「放送」なのだろう。

 作品の公式サイトついでに、「劇場版」と「映画」の違いも気にならないだろうか。基本的に「劇場版」はテレビシリーズの映画化、「映画」は初出がテレビシリーズではない作品となっているようだ。なおテレビシリーズでも子供向けは例外で、映画化されても「映画」であるのが変則的だ。

 また「劇場」と「映画館」の違いはどうだろう。今でも上映前のマナーCMで「劇場」と言っていたりする。シネコンには演劇が可能な広い舞台がなくなった代わりに、ライブビューイングで補えるようにもなった。コンポジットよりも撮影の方が言いやすいように、「映画館」よりも「劇場」の方が言いやすいのもありそうだ。

 一部のメディアでは「映画」と言わずに「劇場版」で統一していたりする。時代が進んでいくことによって変わっていくもの、変わらないもの。境目が薄れるもの、薄れないもの。属人的な部分も残る中で、各業界で使用されている用語から移り変わりを探るのもいいかもしれない。

■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「平成30年史 激変!アニメーション環境」(著述)など。

関連記事