『映像研』や『ブルーピリオド』など“学生の創作”題材のマンガが話題 卒業生の制作したアニメーションにも注目
河合塾グループの出身者による話題作 九州大学からも出身者続々登場
ICAFには大学だけでなく専門学校の参加も少なからずある。一時期、名古屋から参加していた河合塾グループのトライデントコンピュータ専門学校は、2015年に出身者の作品で話題になった。宮内貴広が監督した短編『東京コスモ』である。
宮内は当時ストーリー原案と絵コンテを担当した岡田拓也とともに、映像制作会社の白組に勤務する傍らで本作を制作した。白組に在籍しているなら自主制作ではないだろうとの声も聞かれたが、白組とは関係なく制作されている。
また同校の出身では、文化庁の若手アニメーター等人材育成事業「あにめたまご2020」で『オメテオトル≠HERO』を監督した粟津順もいる。愛知県立芸術大学の大学院美術研究科を経て同校で3DCGを学び、卒業後は『惑星大怪獣ネガドン』の監督などで活躍してきた。
一方で同グループは昨年、トライデントデザイン専門学校の卒業制作『朱』が話題となった。そのアニメーションを監督した安井万里絵は在学中にマンガ家デビューし、ガンガンONLINEで『少女辞典』を連載中である。
最後に九州大学の事例を紹介する。九州大学は、2017年にloundrawの卒業制作「劇場版アニメ『夢が覚めるまで』予告編」で話題となった。在学中からイラストレーターとして活躍していたloundrawは、翌2018年に自身のスタジオとしてFLAT STUDIOを設立した。
九州大学はICAFへの参加経験はないが、それどころかアニメーション制作で注目されているのを意外に思う人もいるかもしれない。ただ基本的には、九州芸術工科大学を前身とする芸術工学部の出身者であるのが分かれば納得できるだろう。
その出身者には『イヴの時間』や『サカサマのパテマ』などの監督である吉浦康裕がいることも知られている。また2018年にゲーム会社のサイバーコネクトツーと制作した『メカウデ』のパイロット版で監督を務めたオカモトなどもいる。
例年であれば、年明けから年度末にかけては卒業制作展のシーズンであった。ところが今年は2月中旬以降、新型コロナウィルスの影響から各地で中止となり、さらには卒業式・入学式の中止・縮小も余儀なくされる事態に陥っている。
卒業制作などの作品は、制作した本人がネットにアップすれば観られるものの、その全てが観られるわけではない。本来なら今年度も新入生ガイダンスやオープンキャンパスも実施されるはずだが、それらが紹介される機会も失われているのが残念でならない。
■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「平成30年史 激変!アニメーション環境」(著述)など。