YouTubeで“料理動画”はなぜ人気? 身近さ・企画性・癒しなど、その魅力を多角的に分析
新型コロナウイルスの感染拡大により、映像コンテンツが人気を高めているなか、もう少し長期的なトレンドとして、YouTubeで「料理」というジャンルが人気を博している。
「急上昇動画」のページでも料理動画を見ない日はなく、最近では「自分を大蛇丸と信じて止まない一般男性」として、アニメの人気キャラクターのモノマネをしながら料理を披露する“とっくん”や、遊戯王のオベリスクの巨神兵に扮して料理動画を投稿する“あまくだり”など、これまでの料理動画とは一味違う動画を投稿するクリエイターも人気を広げている状況だ。料理動画の魅力とは、どこにあるのだろうか。
「食」という題材の身近さ
まず料理動画が人気を集める理由の一つとして考えられるのが、「食」という題材が私たちにとって身近なものだということだ。料理に対しては老若男女を問わず皆関心を寄せており、視聴者を選ばないという大きな特徴がある。また、最近は料理をする/しないという点に男女の垣根がなくなってきており、より料理に対する関心が高まっていると考えられる。
更には料理動画をASMR的な視点で楽しむ視聴者もいる。元銀だこ店員・かっつーの「元銀だこ店員がたこ焼きを作って食べる【料理vlog】takoyaki.」は、ASMR動画ではないものの、たこ焼きが焼けていくジュージューという音の小気味好さや、料理をするときの生活音などが身近で心地良いと評判になっている。近年のYouTube利用方法に増えてきた「ながら見」に適しているという点も、料理動画が人気になった理由のひとつだろう。
YouTuberらしさを感じる企画
以前からYouTubeに多く投稿され、今でも人気を博している元祖・料理動画と聞いて、大食い企画が思い浮かぶ方も多いかもしれない。大食い動画に代表されるような、“自分ではできない”をやってみせるのもYouTuberの動画の醍醐味だといえる。
その「自分ではなかなか体験できない面白さ」が際立っているのが、きまぐれクックの「【衝撃映像】キングサーモンのお腹の中身がイクラまみれだった King salmon 【has subtitles】」だ。衝撃的なサムネイルに目を奪われ、つい再生してしまうこの動画は現在2020万回と圧倒的な再生回数を誇っている。パンパンに身が詰まったサーモンを持ち前の技術でさばいていく姿にスカッとした爽快感を覚える人も多いのではないだろうか。サーモンのお腹が開かれ、サムネイルになっている大量のいくらが画面いっぱいに映された時などはつい「おぉ……」とつぶやいてしまうインパクトがある。
また、YouTuberらしい料理企画が多い水溜りボンドは、“気になるけど自分ではやらないこと”を突き詰めた動画を多く投稿している。特に「この世のもの天ぷらにすると全て100倍美味しくなる説!!!」などは、タイトルの簡潔さからも分かるように色々な食べ物をひたすら天ぷらにして食べていく…という単純な動画なのだが、水溜りボンド独特の掛け合いや「それを天ぷらにするの!?」という意外性で視聴者を飽きさせないことから、589万回の再生回数を誇る人気動画となっている。
視聴者はついカロリーが……とか、それは合わないでしょ、といったことを考えてしまうが、二人はそんなことを気にせずひたすら揚げては食べていく。難しいことを考えずに笑えて、好奇心を満たしてくれるこの動画からは皆が思い浮かべるYouTuberらしさが感じられる。
今回紹介したまさにYouTuberっぽい動画の数々は、先ほど紹介したような“身近さ”とは対極にあるといえる。しかしこの相反する二つの要素を矛盾なく実現できてしまうのが料理動画なのだ。
YouTubeと料理動画の相性の良さ
料理という身近な題材で視聴者を引き付け、YouTuberらしい企画の数々で視聴者をワクワクさせる……といった料理動画の良さを伝えてきたが、もう一つ、料理動画の持つ良さがある。
最近のYouTubeでは、出演者の楽しそうな様子を収めた動画が人気を集める傾向にある。「好きな人たちがただわちゃわちゃしているだけで和む」という人は意外にも多い。そんな視聴者にも、料理という題材は好意的に受け取られる。「好きな人たちが楽しそうに料理をしているだけで癒し」なのだ。
例えばフィッシャーズの「【料理音痴】キーマカレーわからないけど何も見ずに作ってみた!!」は、大人気YouTuber・フィッシャーズの中でも料理音痴なシルクとザカオがレシピを教えられずに言われた料理を作れるのか?というチャレンジ企画だ。普段のメンバー同士の軽快なやり取りと、二人が困惑しながらも頑張って料理を作る様子にファンはついつい笑ってしまう。企画次第ではほっこりコンテンツにも早変わりする料理動画の対応力を感じさせる動画のひとつだ。
また、料理を扱った動画を数多く投稿しているのが東海オンエアだ。東海オンエアはメンバーそれぞれの強すぎる個性を表現するのに「料理」という題材を選び、実際にその試みが大成功しているYouTuberでもある。例えば現在チャンネルの中で人気第2位となっている「【ゼロからの仕込み】ガチンコ!!ラーメン作り対決!!!!!」は現在1800万回再生を突破している。この動画は東海オンエアの人気企画、「文理対決」の形式を用いて、メンバーが3対3に分かれてゼロからラーメン作り対決をするという内容になっている。
理系チームは博識の虫眼鏡、常識人(?)のりょう、東海の主砲・しばゆー。対する文系チームはリーダーてつや、ポンコツな一面もあるとしみつ、破天荒なゆめまる…と、見事にキャラが立っているこの2チームがラーメンを作るのだが、全ての工程に担当メンバーそれぞれの個性が出ていて面白い。この動画は「料理」という題材がうまく出演者の個性を引き出した良い例として挙げられる。