『Talk About Virtual Talent』第二回:飯寄雄麻

『VIRTUAFREAK』仕掛け人が語る、バーチャルタレントにとっての“場所”と“丁寧さ”の重要性

「VTuberのファンは、カルチャーに寄り添って考えてくれる」

 

――そんな飯寄さんは様々な形でバーチャル文化をサポートする活動をしています。まずは2018年末以降運営している、VTuberの楽曲をテーマにしたクラブイベント『VIRTUAFREAK(バーチャフリーク)』をはじめたきっかけについて教えてもらえますか?

飯寄:前職から関係のあった、バルス株式会社の創業者でもある木戸文祥さん(現在は顧問)から、2018年の初頭に「VTuberをマネジメントしようと思っているんです」と相談を受けて、映像の編集ができる人がいないか聞かれて紹介したのが、以前から一緒に働いていた、今はMonsterZ MATEの映像を担当している深山詠美さんでした。そんな経緯もあって、その後も木戸さんとVについて話す機会が増えていって。その中で、ある日2人で飲んでいるときに「VTuberのシーン自体は盛り上がってるけど、リアルイベントがまだ少ないので、一緒にやりませんか?」という話をもらったのがきっかけでした。それが2018年の10月ですね。その時点で、すぐに12月に第一回を開催することを決めたんです。

 当時は、キズナアイさんがNorくんプロデュースの「Hello, Morning」をリリースして、Yunomiさんなど錚々たる面々のプロデュースで9週連続リリースをはじめた頃で、もともと自分が面識のあった音楽プロデューサーが、Vのシーンにかかわりはじめていたのも大きかったと思います。イベント名は何案か候補はあったんですが、「VTuber好き=VTuberのフリーク」が集まる場所として、『VIRTUAFREAK』という名前に決めました。

――『VIRTUAFREAK』は、まさに熱意ではじめたものだったんですね。

飯寄:木戸さんと「どんなに失敗しても、会場費ぐらいは割り勘で払えるぐらいには大人になったよね」という話をしたのを覚えています(笑)。当時からVのカルチャーは進むスピードがものすごく速くて、企業の意思決定の速度ではなかなか追いつけない状態だったかと思います。でも僕たちは「2018年の内に第一回を開催する」という強い意志で、れおえんさん(イラストレーター)や、ウチボリシンペさん(デザイナー)に声をかけました。そのときに、ちょうど福岡のSelectaというクラブをやっていたTAKUYAさんが、秋葉原エンタスの立ち上げに関わることを知って連絡し、場所にも恵まれた形です。出演者は、僕がもともと運営していたネットレーベル(ゆざめレーベル)にもかかわってもらったYunomiさんやバーチャルねこさん、nyankobrqくんに声をかけました。当時はじーえふ名義だったエハラミオリさんや、高坂はしやんさんとワニのヤカさんのユニットは木戸さんがブッキングしてくれました。

――実際に開催してみて、お客さんの熱量についてはどんなことを感じていますか?

飯寄:これまで6回やって感じるのは、とにかく、お客さんが「優しい」ということです。たとえばニコニコ文化だと、匿名であるがゆえに否定的なコメントも多いじゃないですか。でも、VTuberのファンって、カルチャーに寄り添って考えてくれる人たちが多いな、という印象です。これはアイドル文化でも見られるのですが、その中でも「ドヤりたい」的な人が少なくて、ちゃんとシーンにコミットしようとする意識が強いように思います。VTuberの方からも、「ファンが優しくて、精神的な負担が少ない」という話もよく聞くんですよ。熱量はものすごいんですけど、同時にどこか温かい、青い炎のような雰囲気というか。その優しさは、ある一定のVのファンに共通するものなのかな、と思います。

――普段のライブ配信中にも、コメントが荒れたりした瞬間に、コメント欄のリスナーの人たちの中で自浄作用が働いていく瞬間がありますよね。

飯寄:そうですよね。でも、だからこそファンの人たちにどこまで寄り添うのかは、難しいところだと思います。VTuberにとっても、「ファンの人たちに支えられてる」という意識が強いので、その意見を尊重したいという気持ちが強かったり、イベントでもアンケートを取って結果を実際に反映させることもすごく多くて。でも、ファンの人たちの「こうしたほうがいいよ」「こうしてほしい」という要望をすべて聞いてしまうと、そのVTuberのアーティスト性が失われて、もともとファンが感じていた魅力も損なわれてしまうかもしれません。なので、その距離感を上手くはかって、お互いにいい関係性を築いていってほしいと思います。『VIRTUAFREAK』の場合は、自分たちやりたいことや想いを自由に決められる一種の表現方法なので、キャスティングなども含めて、「自分が思う良いもの」を重視している感覚です。

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