音楽制作の”感覚的な操作と個性的な音作り”を学べる、Ableton『Learning Synths』のスゴさ

 一方、現代の音楽制作機材が直感的であるからこそ、おろそかにしがちな基礎を1から学んでいける部分もこのアプリのおもしろいところ。先述のとおり、直感的に操作することで音楽を制作できるのはもちろんのこと、今の音楽制作にはプリセットのパターンなり音色がデフォルトでいくつも用意されていたりする。また、プリセットを後々専門サイトなどから購入することで、特別な知識がなくとも自分が鳴らしたい音を簡単にユーザーのクリエイティブに実装することも可能だ。

 もちろん、Abletonでも「パック」と呼ばれるプリセット音源を販売しているが、こういったプリセットは汎用性が高い反面、どうしても個性が音に表れにくいというデメリットも少なからずある(その良し悪しの議論は一旦置いておくとして)。

 しかし、公式サイトを覗いてみるとわかるように、同社では音楽制作への最新のヒントやアドバイスの紹介にも力をいれている。このようにユーザーのクリエイティブをアカデミックな面からサポートするAbletonの背景から考えると、『Learning Synths』は、ともすれば型にハマりがちな音楽制作をよりオリジナリティのあるものにするための入門書としても捉えることができる。

 そういうわけでまとめると、『Learning Synths』とは、”現代の音楽機材が持つ感覚的な操作性を個性的な音作りのための基礎知識学習に応用した教則ウェブアプリ”というのが筆者の意見だ。

■Jun Fukunaga
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター。DJと音楽制作も少々。
Twitter:@LadyCitizen69

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