Google親会社CEO「AI規制に疑問の余地なし」と表明 AI規制の現状は“世界各国で温度差あり”

 近年におけるAI技術の急速な台頭により、「AIがヒトの雇用を奪うのではないか」という漠然とした不安に対する議論が恒常的に為されている。こうした動きがある一方で、自律自動車の事故時における責任の所在や顔認識技術と人権の関係といった具体的な問題に対処するための「AI倫理」の議論も活発化している。こうしたAI倫理に関して、Google親会社のCEOであるピチャイ氏が意見表明した。

AI業界をけん引する企業の意見表明

 テック系メディア『The Verge』は20日、Googleの親会社AlphabetのCEOであるサンダー・ピチャイ氏が経済誌FINANCIAL TIMES電子版の社説でAI規制の必要性を呼びかけたことを報じる記事を公開した。Googleは囲碁でトッププロ棋士に勝利した「AlphaGo」を開発したDeepMind社を傘下におさめ、世界的に普及しているAIシステム開発環境TensorFlowも無償提供していることからわかるように、AI業界をけん引する大手テック系企業のひとつである。そんな同社を率いる同氏は社説のなかで「AI規制が必要なことは、わたしのこころのなかではまったく疑問の余地がない」と述べたのだ。

 社説では、AI規制の具体的なあり方にも言及されている。AIがヒトに代わって運転することを目指している自律自動車業界のような新興分野に関しては新規のルールを制定すべき、と述べられている。対してAIによるレントゲン画像の分析のような医療分野におけるAI活用事例については、既存のルールを拡張して対処できるだろう、とのこと。

 ピチャイ氏は、社説でGoogleの自主規制についても報告している。同社は広範囲な監視と人権侵害につながる可能性が否定できない顔認識技術については、サービスとして提供していない。

 もっとも、顔認識サービスはAmazonがすでにサービスとして提供している。そして、この事実自体に違法性はない。こうした現状をふまえて、同氏は「紙にあるだけの原則は無意味」と書き、罰則等の実効性を伴った規制の必要性を示唆した。

規制を規制するアメリカ、規制強化を検討するEU

 AI倫理は世界各国で活発に議論されているが、その内容は国によって温度差がある。アメリカのAI倫理の現状については、The Vergeの7日付の記事が報じている。その記事によると、アメリカ政府は7日、AIに関する法律や規制を制定するにあたり考慮すべき事項をまとめた文書を発表した。その文書で強調されていたのは、アメリカ国内においては規制の「行き過ぎ」は制限すべき、ということであった。

 アメリカ国外に対しては、AI規制を厳格化する方向に動いている。5日に発表された輸出禁止規定においては、アメリカ企業がライセンスなしで衛星画像を分析するAIソフトウェアを販売することを禁止することが定められた。

 一方EUのAI規制に関しては、ロイター通信は17日付の記事で伝えている。その記事によると、欧州委員会は公共エリアでの顔認識技術の使用を最大5年間禁止することを検討している。まだ検討中の段階だが実際に禁止された場合には、禁止期間中にこの技術の影響を健全に評価する方法論とリスク管理の基準が制定されるようだ。

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