『ターミネーター:ニュー・フェイト』を軸にAIの未来を考える 人工知能は脅威か、それとも恩恵か

『ターミネーター』新作軸にAIの未来を考える

AIによる自立型兵器は生まれるか

 『ターミネーター』シリーズのAIは軍事目的に開発されていたが、現実世界でも、軍事方面でのAIの活用/研究は進んでいる。

 核兵器に次ぐ「次世代の戦略兵器の目玉」と言われている、AI兵器。戦争遂行に人の関わりを減らすことができれば、自軍の被害を抑えることが可能だし、AIによって人間以上に精密な攻撃ができるようになれば、より効果的に相手を蹴散らせるようになる。

 実際にAI兵器市場では、無人のドローン兵器が見本市ですでに紹介されていた。『KUB-BLA』という爆撃用の無人ドローンは、「神風ドローン」の異名をとっている。無人なので特攻爆撃ができるのだ。以下は『KUB-BLA』の動画だが、標的に向かって急降下し、爆発する様子が映し出されている。

KUB-BLA - a new high-precision unmanned attack complex

 AI兵器の開発は秘密裏に行われることがほとんどで、各国が現状どのような開発を行っているかの全容はつかみにくい。ヘンリー・キッシンジャー元米国国務長官は、AI兵器の開発規制は、核兵器開発規制よりも困難だと指摘している。

 「AI兵器について言えば、敵の無知が自国の最大の武器です。まして(AIテクノロジーの)共有などはもっと困難です」(MIT Tech Review:「AI兵器の規制は核兵器よりも困難」キッシンジャー元米国務長官

 ターミネーターのような自立型の殺人マシーンが誕生する可能性はあるのか、という点が気になるところだが、その答えははっきりとしていない。兵器については、最終的な攻撃の目標設定や決断などは、人間の判断によるべきという原則が、今のところある。

 その一線を超えた兵器“自律型致死兵器システム(LAWS)”について、どのように規制をすべきかというのは、今まさに国際的な枠組みで議論の最中だ。日本政府も今年の3月に、LAWSに対する国際的ルール作りに対して、積極的に参加すると表明した文書を発表している(参照:自律型致死兵器システム(LAWS)に関する政府専門家会合に対する日本政府の作業文書の提出 | 外務省)。

 現状、どこまでを“完全自立型”と見なすかの明確な基準はない。その国際ルールを決めるための会合が、今年の8月にも開催されたばかりだが、まだ結論は出ていないようだ(参照:自律型致死兵器システム(LAWS)に関する国際会議について:海上自衛隊幹部学校)。

 しかし、国際的な取り決めの合意はないまま、各国でAI兵器の研究は続けられているのが現状である。いつどこで、完全自立型の殺傷兵器が生まれてもおかしくないかもしれない。米ニュースクール大学メディア研究学部准教授のピーター・アサロ氏は「各国とも機能を秘密扱いにし、“全貌”が見えないのが大きな問題だ」と語っている(参照:AI兵器が「一線」を越えると…… : 読売新聞オンライン)。

 ディープラーニングの思考にもブラックボックスがあるが、AI兵器は開発状況自体がブラックボックスということだ。

 そういう世界の現状を知ると、本作が提示する未来は絵空事ではないと思えてくる。少なくとも、現時点での一般市民の我々としては、恐怖を抱く理由は十分に存在するのだ。そんな恐怖をリアルに感じつつ、サラ・コナーたちの活躍に拍手喝采するというのが、本作の楽しみ方ではなかろうか。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

映画『ターミネーター:ニュー・フェイト』本予告【新たな運命編】11月8日(金)公開

■公開情報
『ターミネーター:ニュー・フェイト』
11月8日より全国ロードショー
監督:ティム・ミラー
製作:ジェームズ・キャメロン
キャスト:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、マッケンジー・デイヴィス、ナタリー・レヴェス、ガブリエル・ルナ、ディエゴ・ボネータ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2019 Skydance Productions, LLC, Paramount Pictures Corporation and Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

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