ヤフーとLINEの経営統合は世界の流れに逆行? 海外企業との比較にみるメリットとデメリット

 続けてコウガミ氏はこの答えについて、下記の例えで補足してくれた。

「次々に多様なサービスをリリースしても、それを全部使う人はいないでしょう。例えばAppleが去年からいくつ独立したサービスやアプリを出したかといえば、やはり数えるほどしかない。技術力の多くはiOSやOSX上のソフトウェアや新しいサービスに注ぎ込んで、ビジネスに応じて統合を進めている。AmazonもECやマーケットプレイス、プライム、Echoデバイス/Alexa、クラウドと注力するサービスやデバイスを伸ばしている。これは企業体という意味でもそうですが、日本企業がパーティーで攻略していくタイプのRPGだとしたら、グローバル企業は無駄に荷物を重くせず、装備をその都度最適化して自分の体を研ぎ澄ますFPSの様な経営をしていると言えます」

 最後に、コウガミ氏は今回の経営統合がエンタメ・テック業界に与えるインパクトについて、このように話してくれた。

「競争相手となるアメリカや中国のテック業界は、すでにゲームや映像配信、音楽ストリーミングなど、エンタメ領域へ参入しているところが大半ですし、そのうち複数の分野で成功しているケースもあります。今後、日本の2社による新たなアプリゲームや映像配信、広告、決済やマイクロペイメント、リアルタイムチャット、サブスクリプションなどの新サービスが日本に登場するかもしれませんし、2社の競合サービス同士を統合する可能性もあるでしょう。またこれほどの統合ですので、有名なIPを持った大規模なエンタメ企業の買収も狙うかもしれませんね。それらが発表・リリースされたときのインパクトがどのようなものなのか、注目したいですね」

 2社がともにエンタメ領域のサービスを展開しているがゆえに、IT・テック系領域以外にも大きな影響を及ぼしそうな今回の経営統合。まずは両社の繰り出す第一手がどのようなものになるか、楽しみに待ちたい。

(文=中村拓海)

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