ぶんけいインタビュー

“経営者“ぶんけいに聞く、新社名&新たな採用施策を打ち出す理由「常に人の心をくすぐり続けたい」


「”日本一楽な求人”なので、気軽にご応募いただけたら」

ーー株式会社トウメイモードの設立は2017年。そこまでの2年間、どんなことがあったのでしょうか?

ぶんけい:会社をつくろうと決めて、まずは大学を辞めました。まだ会社という形ではなかったのですが、「トウメイモード」というチームは作っていて、そこでフリーのお仕事をしながら、起業について学んでいって。そのなかで、こちらもオカダと同じく、いま役員をしてくれている井上光と、よく仕事をするようになったんです。彼はまだ在学中でしたが、どちらかと言えばロジカルなぼくと、センスで動くオカダの橋渡しをしてくれるような存在で、会社に絶対に必要だと思いました。そこで、「一緒に東京に行こう!」と説得して、3人で法人を立ち上げたというのが最初の経緯です。

 オカダの一言がなかったら東京に来ていなかったかもしれないし、東京に来ていなかったら、YouTubeでの活動もなかったかもしれない。一緒にいて気持ちのいい人だし、あらためて感謝ですね。

ーーそうして、映像作品を中心にさまざまなクリエイティブを手がけてきたわけですが、ぶんけいさんがYouTubeでの活動を休止し、事業に注力し始めるタイミングで、「トウメイモード」から「ハクシ」と、社名が変更されました。「透明」から「白紙」と、ニュアンスはしっかり残っていますね。

ぶんけい:そうですね。常にまっさらな頭で考え、すべてのものづくりに新しい気持ちで取り組むーーという理念は変わらず、少し長くて説明が必要だった社名をコンパクトに、わかりやすいものにしました。候補は他にもあったのですが、ぼくのなかではすぐに決まり、社員を説得する時間のほうが長かったくらいです(笑)。

ーー「ハクシ」としての初めての大きな取り組みとして、面白い形の求人が発表されました。こちらについても詳しく聞かせてください。

ぶんけい:いまは役員がぼくたち3人、社員が4人の計7人の会社なのですが、これまでは大学の後輩や、仕事で出会った人が加入する、という形で人を増やしてきました。ただ、自分自身にも、また会社にとっても、このタイミングで新たな刺激があったほうがいいのではないかと考えて、初めて広く募集することに決めた、という経緯があります。

 並行して通常の採用も行なうのですが、ただ、新しい風を吹かせられる人には、もしかしたら普通のルートでは出会えないかもしれない。加えて、ぼく自身がきちんと就職活動をしたことがなかったので、「もっと簡単にエントリーできる方法があれば」と思っていたんです。細かく履歴書を書いてもらって、志望動機などについて面接で聞いて……という決まった型だと、かかる時間と比較して、実はパーソナルな部分が見えづらいように思いますし、もっと楽で、その人のことがわかるやり方があれば、お互いにとっていいのではないかと。

ーーそこで生まれたのが、今回の「白紙採用」だったと。

ぶんけい:そうですね。本当に何でも思ったことを書けるフォームがあって、記入の上、送信ボタンを押せばエントリーが終わるという、ウェブアンケートより簡単なものです。ただ、画面上での作業では自分を表現できない方もいると思いますので、郵送での応募も受け付けています。募集する職種については、大きく捉えて「作家」ですね。映像に限らず、絵を描ける人でも、曲をつくれる人でも、振り付けができる人でも、「ものづくり」にかかわること全般で、いい出会いがあればと。

ーーなるほど、「こういう仕事があるからこういう人材を募集する」ということではなく、「こんな人と出会えたからこういう仕事をしよう」という発想なんですね。

ぶんけい:そもそもぼく自身、制約のなかで働きたくないから会社を立ち上げたのに、「こういうものをつくる(こういう仕事がある)から、こういう人を」という採用をしてしまうと、その人には制約をつけてしまうということになりますから。

 わかりやすく言えば、それぞれにスキルを持ったフリーランスが集まり、相互作用で面白いものを生み出すチームというか。いずれにしても、”日本一楽な求人”だと思いますので、表現したいことがある方は、気軽にご応募いただければうれしいです。

ーー採用の形自体に話題性があり、企業としての発想の面白さが伝わる「企画」にもなっていると思います。

ぶんけい:会社としてそういうふうに見ていただけたらいいですね。ホームページも情報が増えるごとに、まさにページをめくるように「日々変わっていってるな」「また面白いことをやっているな」と観察してもらえるような場所になっていけたらいいなと思います。やっぱり、作家が望んで行きたくなるアトリエのような場所にしたい、と。

ーーホームページを見ると、ハクシ=白紙という社名について、「染めるか、折るか、ヤギにあげるか。今日も、まっさらな頭で考えています」という締めの文に遊び心を感じますし、作家紹介のページも、アイコンがみなさんの幼少期の写真で面白いですね。

ぶんけい:結局、人は幼少期に大事な部分が決まっているのではないか、という説が自分の中にありまして、みんなに写真を持ってきてもらったら、それぞれの個性がそのまま出ていて。これを作家ページの写真にしたら、きっと伝わるものがあるだろうと。いまだと、どうしても写真を撮るときにはカッコつけてしまいますからね(笑)。

ーー今後発表される作品が楽しみです。最後に、経営者として、またひとりの作家として、中長期的に考えていることをきかせてください。

ぶんけい:長い目で言うと、映画は必ず撮ります! 撮らないと、ぼくは納得して死ねないと思うので、赤字が出ても必ずやろうと決めているんです(笑)。また、作家としての活動だけでなく、表に立つ活動はどうしようかと悩んでいたのですが、タイミングさえ合えばいつでもやる、と決めました。例えば、先ほども申し上げたようにトークならラジオ番組を持ってみたいし、文章なら小説も書いてみたい。作家としても、表に出る表現者としても、常に人の心をくすぐり続けたいと思いますので、両方とも濃くやっていけたらと。

 そのうえで、いまは「自分が本当に表現したいものはなんだろう」と、自分の気持ちも”ハクシ”にして、いちから学び直しているところです。そのなかで、しっかり次の軸をつくっていきたいし、新しい軸ができたら、また次のことに挑戦するのだろうと思います。ぼくが満足するのが先か、寿命が来るのが先かーー気の長い話ですが、常にチャレンジしていきたいですね。

(取材・文=橋川良寛/写真=伊藤惇)

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