日本でも発売中止・延期に揺れるHUAWEI、あらためて新製品の実力をレビュー

 HUAWEIとその関連企業が、米国において禁輸措置の対象となる「エンティティリスト(Entity List)」に追加された。これによりHUAWEIは、米国との貿易が”原則禁止”となり、政府の許可なく取引することができなくなる。

 HUAWEIが販売する端末に搭載しているOS「Android」は、米Google社が開発したものだ。取引禁止品目の中に”ソフトウェア”も含まれているため、今後、Android OSを使うことができなくなると報じられている。これはかなり痛手だが、OSに関して言えばHUAWEI独自のOSを開発すればいい、とも言える。

 しかし、さらに話は進み、英ARM社が取引の停止を検討していることが報じられるなど、事態は悪化している。もしARM社が取引を停止するとなれば、CPUの設計が不可能となり、製品をリリースできなくなってしまう可能性が高い。このことを受けて、日本国内でもHUAWEI新製品の発売が中止・延期されている状況だ。

発表会でも「Googleとの取引禁止」について言及

 それに対しHUAWEIは「既存のデバイスのセキュリティやアップデートに問題はなく、今後も継続してサポートする」と声明を出した。

 日本・韓国リージョンプレジデント「呉 波」(ゴ・ハ)氏は5月21日、都内で開かれた新製品発表会において、米国のエンティティリストに関して「お互いにとって不利益しか生まない」「我々は誠意を持ってAndroidのエコシステムの発展に貢献してきた」と米国とGoogleへ訴えかけたうえで、「既存のデバイスのアップデートなどは継続する」と言及している。

 このように苦境にあるHUAWEIだが、その高いカメラ性能やハードウェアにはファンが多い。発表会時点と状況が変わってしまっているが、気になる人のために、あらためて新製品の情報、その実力を検証してみたい。

「50倍のデジタルズーム」と「ISO感度409600」でカメラが進化

 HUAWEIスマホといえばカメラ性能が高いのが特徴的だ。最新のハイエンドモデル「P30 Pro」では光学5倍の望遠レンズを利用した最大50倍のズーム撮影、カメラの暗所撮影の性能に影響するISO感度は最大409600。革新的な新センサー「RYYBセンサー」を採用したことで、より色鮮やかに撮影可能となった。

 数値だけで言えば、数十万円する一眼カメラと同等のスペックを有している。スマホに内臓するカメラとしては正直オーバースペックだ。そんなプロのカメラマンが持つようなカメラ並のスペックをスマホで実現しているのはHUAWEIくらいだろう。

 発表会では競合他社製品として「iPhone Xs Max」と「Galaxy S10 Plus」との比較に加え、自社製品「P20 Pro」との比較も行っていた。正直言って加工しているとしか思えない様な比較画像が多くあり、筆者は「本当にそうなるの?」と疑いながら見ていた。だがその後の実機デモで、比較画像通りの結果になったときには驚きが隠せなかった。

ズームもこのとおりだ。

 左の等倍では米粒よりも小さいサイズの鳥が、右の10倍ズームでは鳥だとしっかり認識できるほど鮮明に写っている。ズーム時の画質劣化も少なく、10倍程度であればそれほど劣化は感じられない。

 流石に50倍ズームの時は劣化を感じるが、それでも文字が読める程度の解像感はあるので、スマホに搭載されていることを考慮すれば十分すぎるだろう。

AIによる手ぶれ補正もより強力になった。

 シルキーウォーターモードで撮影すると、水の流れが強調された”エモい写真”が出来上がるという。この様な写真を撮る時は、三脚に一眼カメラを固定し長時間露光する必要がある。だがHUAWEI P30であればAIでの手ブレ補正を生かして、三脚なしの手持ちでもこの様な写真が撮影可能とのことだ。

 シャッタースピード(露光時間)を見てみると3.3秒となっており、AIの力なしでは手ブレでまともに撮影できないだろう。

逆光であってもAIによるHDR+撮影機能で、この出来上がりだ。

 写真にこだわる人はもちろん、写真なんて撮れればOKという人にもおすすめできる。なぜなら、逆光や手ブレ、暗闇などの撮影環境を考える必要が全くないからだ。

 使用者がやることは、「被写体にカメラを向けてシャッターを切ること」だけだ。カメラ性能が気になる人は、YouTubeの公式チャンネルがアップロードしている配信アーカイブを見て欲しい。

HUAWEI 新製品発表会

プロカメラマン「カメラを3台持ち歩いてるようなもの」

 プロカメラマン・萩庭桂太氏がゲストとして登場し、P30 Proのカメラ機能についての魅力を語った。「月の撮影・暗所での撮影などを、ぜひともやってほしい」とHUAWEI側から言われたそうだが、どれもそつなくこなしたP30 Proに驚きが隠せなかったと語った。

 実際に萩庭さんの作例を数枚出していたが、どれもスマホのカメラで撮ったと言われなければ、わからない程の出来だった。「一番言いたいのは撮りたい時にすぐ撮れる」「カメラを3台持ち歩いているようなもの」と絶賛しており、プロカメラマンから見てもカメラ性能は驚きとのことだ。

P30、P30 LiteをSIMフリーで販売

 HUAWEIはこの時点で、国内SIMフリー市場にP30を市場想定売価77,880円(税抜き)で投入すると発表。カメラ性能はP30 Proに若干劣るが、それでも光学3倍ズーム可能な望遠レンズなどを備えており、SIMフリー端末としてはかなりハイスペックな部類だ。

 ミドルエンドとしてP30 Liteを市場想定売価32,880円(税抜き)で投入と発表。こちらは望遠レンズを搭載していないが、それでも写真の出来はかなりのものだ。指紋センサーが画面内ではなく、背面なのも特徴の1つだろう。「価格を抑えながらもカメラ性能は妥協したくない」という人に合った、コスパ重視モデルとなっている。

タッチアンドトライ

  P30、P30 Proのズーム性能には驚きの連続だ。発表会後のタッチアンドトライコーナーでは、P30シリーズを自由に触ることができた。P30 Proの望遠機能を使えば、遠くにある東京タワーのミニチュアにかかれている文字も読むことが可能だ。上の写真は肉眼で見たときのイメージだ。

 手前のP30 Proに東京タワーがそれなりに大きく写っているが、実際は10m近く離れた位置にある赤丸で囲んだ東京タワーを写している。

 さらにズーム倍率を上げて50倍で撮影するとこんな感じだ。東京タワーの展望台に書かれた「HUAWEI」の文字がしっかりと視認できるだろう。ノイズや多少のぼやけが気になるところだが、これだけの写真をスマホのカメラで撮影できるのは驚きだ。

 Pixel 3 XL(左)と比較してもこのとおりだ。Pixel 3 XLは等倍のレンズのみ搭載しているが、AIによる補正で高倍率でも高画質で撮影可能なデジタルズーム技術が搭載されている。遠くを撮影する時にはこの機能が非常に頼もしいのだが、流石にP30 Proの前だとこの通りの結果になってしまった。Pixel 3 XLで撮影した写真では展望台に書かれた「HUAWEI」の文字は読み取れなかった。

 さらに、P30 Proの望遠レンズにはOIS(光学式手ぶれ補正)とAIS(AI手ぶれ補正)が搭載されているので、手持ちでもブレずに撮ることができる。

マクロ撮影もOK

 これはP30 Proで撮影したキーボードだが、このぐらい近寄って撮ることも可能だ。マクロ撮影モードでは2.5cmまで接近して撮影可能で、この機能自体はMate20 Proに搭載されていた機能だが、今回発表されたP30 Proにも搭載されている。

 望遠撮影に加えて、マクロ撮影も可能となると、こうした記事用の撮影も含めて、本格的にカメラ代わりになる可能性すらある。

ミドルエンドでも質感よし、P30 Liteも良さそう

 格安モデルとして発表されたP30 Liteには正直あまり興味がなかったのだが、質感やカメラ性能を考えるとこの価格帯なのはいい意味で期待を裏切られた。P30やP30 Proと違い、望遠レンズを搭載していないのでズーム撮影には弱いが、普通の写真撮影やポートレートだけであれば十分な画質を備えている。

 P20 Liteと比べると超広角カメラが追加され、コスパ重視のミドルエンドモデルにしてはかなりの贅沢仕様だ。ズーム撮影に関しても、流石にP30やP30 Proには劣るが、AI補正のおかげかそれなりには撮れていたので、ズーム撮影をたまにするという人にもおすすめできる。

 さらに、インカメラは2400万画素とかなり高画素になっており、美顔機能などの主要な機能を搭載しているので、自撮りメインという人にもおすすめできそうだ。

日本のSIMフリー市場が大きく変わる

 スマホにそれほど興味がない人でも、今回の一連の報道でHUAWEIについて知ったという人も多いだろう。

 HUAWEIはアメリカから実質的な締め出しを食らい、ピンチであることは確かだ。一方で、世界の次世代携帯通信技術「5G」の技術開発をリードしてきたほか、出荷台数は世界トップと実績があり、日本では2011年の東日本大震災の際に通信インフラ復旧に協力したという話もある。

 これだけの技術力と実績を持っている企業がもし仮に倒れたとすれば、通信というカテゴリにおいて、世界的な影響が出るだろうことは容易に考えられる。身近なところで言えば、日本のSIMフリー市場に大きな影響を与えることになるだろう。

 「高価で高性能なスマホ」は市場に溢れているが、「安価でそれなりに使えるスマホ」となると、HUAWEIを含む数社に絞られてしまう。HUAWEIが倒れることになれば日本のSIMフリースマホの平均価格は上がり、お手頃価格の端末の選択肢が失われるかもしれない。いずれにしても、今年はHUAWEIの動向により、日本のSIMフリー市場が大きく変わることになりそうだ。

■tomokin
スマホとPCがないと生きていけない引きこもり系ガジェットオタク。普段はスマホやスマホ関連のガジェット、パソコン、ゲーミングデバイス、オーディオ製品などのレビュー記事をブログに投稿しています。サイト:https://tomokin-gadget.com

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