マンガアプリ『マワシヨミジャンプ』で暇つぶしが捗る 読みたいものが読めない“不自由な面白さ”
集英社『週刊少年ジャンプ』編集部が1月10日、位置情報と連携し、近くに“落ちている”マンガを拾って読むことができるアプリ『マワシヨミジャンプ』を公開した。1週間あまり利用してみた結果、これがなかなか面白いので、簡単ながらレポートしたい。
『マワシヨミジャンプ』は上記の通り、マップ上に落ちている電子コミックを拾って読み、読み終えたものを好きな場所に置いたり、交換したりできる新感覚の漫画アプリだ。『週刊少年ジャンプ』のバックナンバーのほか、新旧の人気タイトルはかなり網羅されている印象で、『DRAGON BALL』や『ONE PIECE』という王道ジャンプ作品、あるいは懐かしの打ち切りマンガや『はだしのゲン』のような名作まで、単行本単位でランダムに落ちている。そこから続きの巻を購入することも可能だ。
筆者は渋谷という人の出入りが激しいエリアで生活していることもあってか、常に手の届く範囲には20冊以上の漫画が落ちており、移動中や休憩時間に、それとなく手に取って読んでいる。複雑な操作もなく、まさに拾い読みという感じで、1冊丸ごとサクッと読めるのがいい。直近では、「お、懐かしいやん」と『ろくでなしBLUES』2巻を読んでみたり(そう、必ずしも1巻から読めるわけではない)、そう言えばちゃんと読んでいなかった『帝一の國』1巻を見つけてまんまと続きが読みたくなったりした。そうこうしていると、1時間くらいなら簡単に潰れる。ちなみにいまは、『すごいよ!!マサルさん』の1巻が手元にある。
「読みたいものが読めないから不便」という批判はお門違いで、アプリのリリースに際し、ジャンプ編集部は「電車の網棚に置かれた漫画誌を手に取ることで、知らなかった作品を読んで好きになるような、かつてあった体験を、現代に新たに蘇らせたい」としている。ネットショッピングでもストリーミングサービスでも、行動履歴から自分好みの商品/作品がオススメしてもらえる昨今、「ジャンプ作品」(と言っても数は膨大だ)という一定の枠のなかで、ランダムなレコメンドが受けられるのは、確かに楽しく新鮮だ。逆にいうと、このアプリで目的の作品を1巻から順に読んでいこう、というのは現実的ではなく、マンガとの一期一会を楽しみ、不自由な面白さを見出す余裕が必要になる。町の定食屋さんで、普段読まない『ゴルゴ13』や『島耕作』シリーズをなんとなく読む、あの感じだ。
その他、何か面白い使い方はできないか。自分の周りにマンガを集めて、道玄坂上を漫画喫茶にしようという悪い考えが浮かんだが、一つのエリアに置くことができるのは6冊までのようで、あえなく断念。エリアは6角形のハニカム構造になっており、自分がいるエリアと、周囲の6エリアから本を取ることができる。最大42冊だ。『DRAGON BALL』や『テニスの王子様』がちょうど全巻収まるが、おそらく中心的に配布されているのはどのタイトルも序盤の1~5巻くらいで、またユーザーは一度に一冊しか持てないため、特定の作品をどこかに集めてコンプリートしよう、というのは、大規模な呼びかけをしても難しそうだ。
余談はさておき、位置情報とマンガ、という組み合わせにはなかなか可能性がありそうな気がする。例えば、カーナビと音楽ストリーミングサービスが連携し、位置情報によって好ましい楽曲(湘南をドライブ中ならサザン、とか)をセレクトしてくれるサービスがあるが、『マワシヨミジャンプ』でもそんなプロモーションが可能かもしれない。つまり、登山客が集まる街に『神々の山嶺』が落ちていればよく読まれるだろうし、釣り人が集まる港町なら、全3巻で惜しまれつつ終わってしまった『ツリッキーズピン太郎』が思わぬ人気を博すかもしれない。新宿歌舞伎町には『夜王』が落ちているべきだし、もちろん、葛飾区には『こち亀』がたくさん落ちていてほしい。アプリでコミックをどこかに置くとき、コメントが残せる「マワシヨミ帳」という機能があり、「亀有で拾ってきました」と書かれた『こち亀』を見つけたら少しテンションが上がりそうだ。