今の時代に『セルフブランディングメディア』が必要な理由とは? 関根康人×武藤千春が語り合う

「すごく細分化しているからこそ、全部がごった煮になったものもあっていい」 

ーーこれまで、マーケットのトレンドを見抜いた施策を数多く仕掛けてきた関根さんにとって、今のメディアを取り巻く状況はどのように見えますか。

関根:一言でいうと、すごく細分化してきていると思います。なので、今度はそれが取りまとまる場所が必要になってくるんじゃないかなと思っていますし、そのためには何かしらのテーマが必要かなと。TwitterもInstagramも、それぞれ見ている属性が全然違いますし、YouTubeもTikTokも独自で経済圏ができていますよね。そういう使い分けがあってもいいと思うのですが、全部がごった煮になったものもあっていいじゃないですか。それが『スクランブル』というメディアの由来になっているんです。『スクランブル』って英語だと悪い意味で「ごちゃごちゃしている」ということなのですが、渋谷のスクランブル交差点って色んな価値観の人が交差しているけれど、整然と流れていくのが面白いなと思っていたので、メディアの名前に据えてみました。

ーー各ライターさんに関しては、どういう風に基準を設けて依頼したんですか?

関根:こちらからお声がけさせていただいたり、やりたいと言っていただいた方とも全員,

面談させてもらっています。そこでどんなことを発信していきたいか、何が好きなのか、将来どこを目指しているのかを1時間くらい話して、発信すべきものが見つかった人にはお願いをしています。

ーー対外的な募集もこれから受け付けていくんですか?

関根:そうですね。ジャンルはオールジャンルとしているので、その中で面白いことを発信していける方はどんどんお誘いしていきたいですし、立候補もお待ちしたいです。書き手が増えれば増えるほど、SNSで本人のファンが見つけてくれるところから、別の記事に流れていって、新しい誰かのファンになってくれると思うので。

ーー武藤さんが「おでかけ」の記事を書いていますが、同じ人がいろいろなテーマの記事を書いていくことになるのでしょうか?

関根:いえ、まずは面談したうえで決まったテーマに沿って、同じ題材について何回も書いてもらえればと思っています。武藤さんも五反田で何記事か、色んな視点から書いていただこうとしています。アーカイブとして溜まっていった時に、1つのテーマがある程度深掘りされてる方が強いなと思うので。例えば、ラーメンがすごい好きな子がいるんですけど、アーカイブを見るとひたすらラーメンのことしか書いてないし、自分の写真じゃなくてラーメンの写真がメインなんですよ。実際にその方にはラーメンの仕事が来たりしています。

ーー確かに。では、基本的にサイト上で各ライターさんが連載をいくつか持っている、という状態が続くわけですね。ちなみに武藤さんとはどういう面談を?

関根:「さて、何を書きましょうか?」というところから始まりましたよね。

武藤:そうですね。そこから私のやっていることを改めてご説明して、ブランドは商品という形で発信ができていること、自分自身のことはSNSやラジオで発信できているということをお話ししました。「じゃあ、いま発信したいのに発信しきれてないことってなんだろう?」と考えた時に、五反田のボランティアのことが浮かんだので、それを関根さんに伝えたら「面白い!」と反応していただいて、書くことになったんです。改めて考えてみると、確かに地域への思いをちゃんと形にできる場所は今まで無かったので、『スクランブル』がそれに向いている場所なんだと思うようになりました。

関根:間違いなく面白いだろうと確信したんですよ。

武藤:私は最初の記事を書きながら「これでいいのか?」と思ってました(笑)。

関根:(笑)。でも、武藤さんのように華やかなお仕事をされている方が、自分の愛する街をちゃんと紹介していたり、ボランティア活動もしているということを発信するのは、知ってもらう価値がすごくあることですよね。あと、多分こういった自分たちの住んでいる地域のこと、地元のことをちゃんと草の根で発信していくのは、今後大事になってくると思うんです。いまは地方創生がある種の過渡期に来ていると考えていて、こういった活動は次第にいろんな地域に派生すれば、町おこしや新しい地方創生の形に繋がる可能性もあると思うんです。それに、今回の「五反田」のように、テーマが狭ければ狭いほど面白く感じるんですよ。だから「五反田」記事には全力で賛成させてもらいました。

ーーほかに、関根さんが面談してみて「この人×このテーマ」で面白いなと思った方は?

関根:かなりの数の方と面談したので、ご紹介したい例はいくつもあるんですが、「私は漫画が好きなので、そのことについて書きたいです」みたいな趣味特化の方はわかりやすくていいんですけど、変わった方も何人かいて。例えば、瀬名葉月さんという方がいるんですが、彼女は最初「音楽がすごく好きで、フェスとかもよく行く」という話から始まり、「飲み歩きが好きで色んな面白いお店に行く」を経て「オシャレな店よりもローカルな大衆居酒屋や個性的なお店の方が好き」という話題にたどり着いたんですよ。そこで「ずいぶんクセが強いですね」と話したら「『クセが強い』ってテーマは面白いですね」という話になり、彼女の記事はひたすら「クセの強いもの」を紹介することになったんです(笑)。

ーーそういった形でジャンル特化や地域・モノ特化ではなく、ニュアンスで括るということもあるんですか。

関根:スタートした方々のなかでは稀有で実験的な試みですね。基本的にはそれに興味があって、自分で書いていて苦にならなければいいかなと思っています。

ーー確かにその方がモチベーションも上がりますもんね。武藤さんはしばらく「五反田」で発信をしていくということですが、今後こういうカテゴリについても書いてみたいと思うものはありますか?

武藤:身近に感じていただける情報や自分の体験を発信していきたいと思います。SNSではそれぞれに適した距離感を出しつつ、ここでは実際に気軽に行ける飲食店や、お店のなかでも個性的に感じる部分、挑戦してみようと思える要素を発信できたら面白そうです。

ーー面白いビジョンですね。武藤さんは元々アーティストとして活動を始めて、現在はこうしてファッションの分野にも出てきているわけですが、そのなかで今のような考えに至るうえで、価値観が変化したポイントはあるのでしょうか?

武藤:10代はずっと音楽をやってきて、それを経てファッションという道に進み始めたんですが、自分の中で価値判断の基準はあまり変わっていません。やり方は違っても、自分を発信するというベースのことは変わらないですし、知識や経験が少しずつ増えていても、結果的に自分の考えたことや作ったもの、感じたことを人に伝える、という意味では何も変わらないのかなと。ただ、これらはすべて受け手の方がいてくださっているということありきだと思っているので、興味を持ってもらえたり、役に立ったりできるものになればいいなと考えるようになりました。

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