加藤よしきの“ゲームのいけにえ”
PS4『スパイダーマン』に漂う“親愛なる隣人”感! オープンワールドと地域密着型キャラクターの相性
ただ、こうした“親愛なる隣人”感を楽しむ分には何のストレスもないが、戦いに関しては中々シビアなバランスである。最初のボスからけっこう強く――単に私の腕前というか、アクション・ゲームが下手くそなせいもあるが――しっかり考えながら戦うことが求められる。また“親愛なる隣人”感が強いゆえに、名のあるスーパーヴィランならまだしも、そこらのチンピラに殴り殺されると「親愛なる隣人が今まさに殺されたんですよ! これが花の都・大ニューヨークの無関心か!」と脳内に長渕剛の『とんぼ』は流れる悲しい気持ちになるのも事実だ(これは没入感がそれだけ強いという証でもある)。
アクションの難易度はシビアながらも、スパイダーマンの需要な要素、すなわち爽快感のあるアクションと、何より“親愛なる隣人”感を楽しめる作品であることは間違いない。さぁ君も、ゲームを遊んで“親愛なる隣人”になろう!
……こう書くと、やはり怪しい宗教勧誘感があるが、それはもう和訳の問題だと割り切ってほしい。ほら、『ランボー』(82)の最後で爆弾で吹き飛んだ仲間の死に際の言葉を回想するランボーが「アイツは言ったんだ! うちに帰ってあの車を運転してぇよぉ!」と叫ぶけど、あんまり「運転してぇよ」とは言わないだろうと思うのと一緒で、この辺は言葉の壁がある以上は仕方がないものである。
■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。