SNS・YouTubeからさらなる人気獲得へ アニメ『はたらく細胞』の新しいPR戦略

 コンテンツのプロモーションにおいて、近年でSNSや動画共有サイトが有効なツールになっている。テレビドラマなどで、ツイッターで視聴者参加型の企画を行なったり、インスタグラムでサイドストーリーを展開したりと、ウェブ上で立体的に作品の魅力を高める仕掛けも一般的になったが、なかでも注目したいのが、人気コミック&アニメ『はたらく細胞』の取り組みだ。

『はたらく細胞』とは?

 『はたらく細胞』は、『月刊少年シリウス』で連載中の漫画で、7月からはTOKYO MXほかでアニメ版が放送されている人気作だ。人間の体の細胞たちがどういった役目を果たしているかを描いており、普段は気にも留めない、各細胞の役割がわかりやすく解説されているのが特徴。風邪をひいた時、インフルエンザにかかった時、花粉症の時など、様々な状態の体内で何が起こっているかがよくわかり、それぞれに個性的な細胞たちを楽しく眺めているうちに、人体の不思議を知ることができるのも人気のポイントだ。

夏の猛暑をキッカケに社会貢献しつつPR

 今年の夏は猛暑で、全国的に気温が35度以上の日が続き、全国各地で熱中症により緊急搬送のニュースが相次いだ。そんななかで、『はたらく細胞』の公式ツイッターアカウントは、同作第2巻の6話を「講談社コミックプラス」で無料公開したと発表。というのも、この6話が「熱中症」をテーマに描かれた話だからだ。

 「熱中症は休めば治る」と考える人が多いようだが、軽度であればまだしも、重度の症状になると話は別だ。メディアでも警鐘が鳴らされているが、体の深層体温が高い状態が続くと、死に至ることも珍しくない。同作を読み、熱中症のメカニズムを理解して、正しい対処を知るだけでも、そうした危険が避けられる可能性は上がるだろう。

 『はたらく細胞』は若年層にも親しまれる作品だけに、ニュース番組で取り上げられるのとはまた違ったルートで、広く必要な情報を届けることに貢献することができる。そうした判断からの無料公開と思われるが、結果として、作品の面白さを知った人も少なくなかったようだ。社会貢献も兼ねた、有効なPRである。

ボンボンTVでアニメ第1話を無料公開

 また、期間は終わってしまっているが、7月23日〜8月22日までの1ヶ月の間、人気YouTubeチャンネル「ボンボンTV」で、アニメ版の第1話が無料公開されていたのも、新しい取り組みだ。

はたらく細胞ゼミナール 第0回

 ボンボンTVは、『はたらく細胞』の版元である講談社と、動画クリエイターのマネジメントを行なうUUUMが共同運営するYouTubeチャンネルで、だからこそ、アニメ本編の配信が実現した。教育的なニュアンスもあるボンボンTVと、『はたらく細胞』という作品の相性は良く、代々木ゼミナールの生物講師である鈴川茂先生が、細胞について解説する、「はたらく細胞ゼミナール」という動画も配信。アニメの公式サイト、あるいは特設サイトでこうした企画を行なうことも考えられるが、約150万人のファンを抱え、かつ相性のいい人気チャンネルでの展開は、より高いPR効果を持つに違いない。

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