『スターフォックス64』が教えてくれた“対戦”の楽しさ 学校の看板を賭けた隣町の少年との勝負

 確かに自己紹介したはずだが、彼の名前も顔も思い出せない。彼が放った言葉が正確かも曖昧だ。しかし、とにかく対戦相手が素直に私を称えて、そこから何回も対戦したのは違いない。対戦はやがてスコア・アタック勝負になり、私が負けて彼が勝つステージもあれば、その逆もあった。お互いテクニックを披露しながらゲームを遊び、やがて各々の門限が迫る頃、「そろそろ帰るか」と普通のテンションで解散となった。その後、彼とは会っていないし、手配をしてくれた友人とも受験やら何やらで気がつけばバラバラになっていた。今になって思うと勿体ない気もするが、小中学生の友情はそんなものだろうとも思う。

 私は対戦が苦手だ。今でも基本的にゲームは一人で遊ぶ。しかし、私は本作を通じて知った。私でも勝てるゲームがあること、負けても対戦相手を素直に称賛できる人がいること、自分自身が負けても楽しいこと、そして楽しい「対戦」があること。私は『スターフォックス64』というゲームを、そしてあの日の対戦を決して忘れないだろう。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

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