東海オンエア・虫眼鏡 出版記念インタビュー「学校でも周りを騙せる“ちゃんとした本”になりました」
虫眼鏡の「概要欄」は、どう生まれる?
ーーさて、本題の書籍についてですが、“動画のおまけ”にとどまらない面白さの「概要欄」は、ファンからも出版を待望する声が相次いでいました。具体的には、どのように企画が進んでいったのでしょうか。
虫眼鏡:もともとお金を出さなくても読めるものだったので、僕自身、それで儲けようという気はなかったんです。ただ、YouTubeのコメントで「絶対売れます」「まとめてくれたら3000円出します」なんて言ってくれる人もいて、見て見ぬ振りをするのもなんだなと思って、やっちゃおうと。UUUMのバディさん(動画でもおなじみのタカオカ氏)に相談してみたら、「講談社さんに持っていきます」と言うので、そこまではしなくていいのにと思ってました(笑)。
ーー散文的だったものが一冊にまとまると、発見もあったのでは?
虫眼鏡:普段は10分~20分で一本書いているので、あまり大したことをしている感じもなかったんですけど、束ねて一冊の本になったのを見ると、もしかしたらすごいのかもしれないと思ったりしました。デザインも、学校に行ってもちゃんとした本だと騙せるようなものになっているし、僕もすごいけどプロもすごいな!と(笑)。
ーー本の中では、概要欄はマッシュポテト=添え物のようなもの、という言葉もありました。目立ちすぎてもいけなかったり、逆に動画が少しトゲトゲした内容だったら中和する役割もあったりと、バランス感覚も大事になりそうです。
虫眼鏡:そうですね。例えば、動画には入りきらなかったけれど、本当はこれも言いたかった、ということを補ったり、内容が物議を醸しそうなときは言い訳をしておいたり、けっこう便利に使ってます。ネタがあるかないかによりますけど、書くことが決まっていたらすぐ書けてしまいますしね。
ーーオチまでだいたい想定して書き始めるんですか? それとも、アタマから書き始める?
虫眼鏡:完全にアタマからですね。途中まで書いて、オチをどうしようかなと考えて。何も思い浮かばんわ!というときは、そのまま終わりますし。
ーーくだらないことをマジメに考察しているのが面白い回がある一方で、最後の一言できれいに落とす回もありますね。
虫眼鏡:どちらかというと、僕は最後の一言できれい締めて、「よっしゃー!」ってやりたいんですけど、毎回思い浮かぶものではなくて。うまく締められないときは、考えている風の文章にすることが多いですね。
ーーこうしてまとまると、文章のリズムがよく、語彙も豊富であらためて筆力の高さを感じます。もともと、文章を書くのは好きだったのでしょうか?
虫眼鏡:もともと本を読むのが好きで、国語が得意だったんです。そういう意味では書くことは嫌いじゃない人間だったのかなと。ただ、理系だったので大学時代はほとんど書いていませんでしたけど。
ーーなるほど。動画のネタは常日頃から考えていると思いますが、「このエピソードは使えるな」という、概要欄用のストックも?
虫眼鏡:そうですね。携帯にメモしてあります。概要欄って、実は「動画と全然関係ないじゃん」というときもあって、悩んでいると時間の無駄だと思うので、いつかどこかの概要欄に書こう、というものはストックしていて。それを無理やり動画と関連づけて書いたり。
ーー「大あさり」(動画:朝ごはん一人だけ「大あさり」の刑)から「ラッコ」の話題、みたいな。
虫眼鏡:そうそう、そういうやつです。
ーー本にも書かれていたことですが、動画、ラジオ、文章と、情報量が少なくなるほど、受け手の想像力に委ねる部分が出てくると思います。普段、東海オンエアの動画を楽しんでいるファンとは違う人たちが、この本を楽しむ可能性もあるのではと。
虫眼鏡:おっしゃる通りで、マスクをしている女性ってめっちゃかわいく見えるじゃないですか。それと似ているなと思うんです。動画だと、顔や雰囲気が嫌いとか、キモいという方でも、本は格式が高いメディアだし、偏見のない土壌でアピールできるかもしれない。それが狙いで本にしたわけじゃないですけど、いろんな人に届けばいいなと思います。
ーー動画とともに概要欄の文章は増えていくわけで、本書の続編もあるかもしれませんし、ファンとしては虫眼鏡さんが描くグループのドキュメンタリーや、創作も読んでみたいと思いました。可能性はありますか?
虫眼鏡:そうですね、果たして僕にその能力があるのか、ということと、この本が売れるのか、というのが問題だと思いますが、「概要欄」はお金を出さなくても読めるものなので、次は世に出していないものを出版したいな、という気持ちはあります。