乃木坂46、神MV『シンクロニシティ』の“影”が意味するもの 詩的な映像表現を分析

シンクロニシティ(TYPE-A)(DVD付き)

 乃木坂46の20thシングルの表題曲「シンクロニシティ」のMVが、4月5日の公開からわずか4日にして230万回再生を超える大ヒットとなっている。同MVは、3月中旬に建築家の三澤文子氏が設計した木造建築にて撮影され、メンバーは全員が裸足で踊った。偶然の一致を意味する“シンクロニシティ”を、ダンスやフォーメーションで表現することをコンセプトにした映像作品で、これまで乃木坂46の「制服のマネキン」や「扇風機」などのMVを手がけた池田一真氏が監督を務め、「インフルエンサー」を手がけたSeishiro氏が振り付けを担当した。

 ネット上では、メンバーの生駒里奈の卒業ソングということもあり、「生駒ちゃんの表情に泣けた」「すべてが神々しい」「これは乃木坂46にしかできない表現」など、絶賛の声が多数挙がっている。メンバーたちのパフォーマンスそのものの美しさもさることながら、その魅力を最大限に引き出す映像表現もまた、本作の特筆すべきポイントだろう。映像表現に詳しいライターの久保田和馬氏に、本作で活用されているテクニックを解説してもらった。

乃木坂46 『シンクロニシティ』

 「『シンクロニシティ』のMVは、『制服のマネキン』のMVを手がけた池田一真氏の演出で、同じようにひとつの空間を使ってダンスを見せることに重きを置いています。『制服のマネキン』と大きく違うのは、“影”もしくは“シルエット”を演出として使っているところ。後ろから射す光と足元の影をしっかりと映していて、そのバランスが絶妙です。特に、ロングショットになった時にその人物と影の関係性がはっきりと表れています。窓の形に合わせてセンターの影が小さくなって、横に行くほど影が長くなっているのが印象的です」

 メンバーたちの“影”は、歌詞にある「共鳴する誰か」を象徴しているようだと、久保田氏は続ける。

 「まるで影がメンバーと一緒に踊っているような感じで、その意味を深く考えさせるような、イマジネーションを喚起させる映像だと思います。一番のサビに入る直前に、すっとスカートのすそを上げる仕草で集団の影が大きくなって、1人離れていたセンターの白石がその影の中に入っていくのも、一種の“共鳴”の表れのように感じました。衣装も秀逸で、白いワンピースは彼女たちのシルエットを作る上で重要な役割を果たしつつ、木造建築の空間に溶け込むように、主張を抑えた品のあるビジュアルになっています。なおかつ影との明確な対比をつける効果もあり、俯瞰ショットではその美しさが格段に映えています」

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