『アメトーーク!』家電芸人回でも話題のウェアラブルスピーカー “音楽を身にまとう”メリットとは
では、こうした視聴スタイルのメリットとはなんだろうか。昨今はスマートスピーカーや音楽ストリーミングサービスの台頭で、常に音を再生できる環境が簡単に手に入るようになった。そのたびにスピーカーの前に行く、あるいはイヤホンを装着するというのは、考えてみると手間ではないのか? それならいっそ肩にスピーカーがあればいい。
そんな理屈もわからないでもないが、ウェアラブルスピーカーのメリットはやはり振動によるフィジカルへの刺激をおいて他にないと思う。ライブ会場のような低音の震えを手軽かつそれほど大音量でなくとも感じられるのは、ウェアラブルスピーカーならではのユニーク体験ではないだろうか。
テレビは大画面化を続けるが、それに続くようにサウンドバーなどの視聴環境も映像の迫力を損なわないよう進化してきている。しかし音楽には音量という制限があり、もっといえばテレビの大型化と異なり音の高音質化は万人にわかるものでもない。音は空気の振動だが、その振動を体に感じることで、高音質とはまた違った切り口で音楽を味わえるだろう。
ちなみに、1997年にソニーが「SRS-GS70」という肩載せ型アクティブスピーカーを発表している。既に廃盤となってしまったが、この時代にこの切り口は約20年ほど早すぎたのかもしれない。
ウェアラブルスピーカーが1つあれば、自宅のPCスピーカーは不要という人も出てくるかもしれない。家でイヤホンを使う人なら、イヤホンもいらなくなるかもしれない。では屋外での使用シーンはどうだろう。街中で使うのはかなりハードルが高いが、アウトドアでプライベートに音楽を楽しむのには良い気がする。スピーカーと違い、周囲へ音をばらまくことがないというクローズ感が活きる場面は多い。
これからのウェアラブルスピーカーはどの方向に進んでいくのだろうか。昔のSF映画でもヘッドセットはよく見かけるのに、首にスピーカーを掛ける人は見たことがない。個人的には、首掛けスピーカーはかなり異色的なプロダクトではないかと思っている。“キワモノ”の歴史を繰り返すのか、第3の視聴デバイスとなるか、果たして。
■ヤマダユウス型
DTM系フリーライター。主な執筆ジャンルは音楽・楽器分析、アーティストインタビュー、ガジェット、プリキュアなど。好きなコード進行は<IVM7→VonIV>、好きなソフトシンセはSugarBytesの「Obscurium」。主な寄稿先に『ギズモード・ジャパン』、『アニメイトタイムズ』、『リアルサウンド』。