“本を聴く”時代がやってきた? 大人の読み聞かせ「オーディオブック」で読書体験が変わる
ほとんどの人にとって、読書の原体験といえば、文字も読めない小さな頃に母親からしてもらった「読み聞かせ」ではないだろうか? 2018年はそんな「読み聞かせ」が新たな読書体験の潮流として台頭する予感がしている。
耳で読む、オーディオブック
書籍というフォーマットのコンテンツは売り上げ不振と言われながらも、多くの物が電子化される時代において、まだまだ完全に置き換わっておらず、需要は失われていない。そんな中、新たな本の楽しみ方として注目されているのが「オーディオブック」だ。オーディオブックは書籍の内容を音声化したもので、名前の通り、音楽と同じように耳で楽しむことができる。ナレーターや声優が読み上げてくれるため、聞き取りやすく、本のように両手と両目を使わずに済むというメリットもある。しかもスマホひとつあればどこでも本を聴くことができるという手軽さだ。
スマートスピーカーとオーディオブック
筆者も度々取り上げている「スマートスピーカー」の話題。スマートスピーカーのおかげで音声アシスタントがいる生活は少しだけ便利なものになっている。スマートスピーカーのほとんどは音声を主なインターフェースとしている特性上、そのコンテンツも音声に特化したものになる。そう、だからこそ、オーディオブックとの相性は言わずもがな。ECだけに止まらないインターネットの巨人・Amazonを始め、Googleや数多くの日本企業もスマートスピーカー戦争に乗り出しているのは、ガジェットに関心がある人であれば周知の事実。そうでない人も頻繁に放映されているTVCMで「アレクサ」「OK Google」という言葉を耳にしたことがあるはずだ。各社がプロモーションに力を入れ、普及拡大を目指すスマートスピーカーがあるからこそ、オーディオブックもひとつのコンテンツとして市民権を得ることが現実味を帯びてくる。
オーディオブックアプリのあれこれ
そんなオーディオブックを利用するには、専用のアプリケーションが必要となる。オトバンク社が提供するaudiobook.jpは月額750円で1万冊以上の本を聴くことができるサービスで、その前身となる「FeBe」をリニューアルする形で提供されている。驚くのはこのオーディオブックサービス「FeBe」は、2007年からサービスを開始しているということ。2007年といえば初代のiPhoneが発表され、まだアメリカの一部のギークたちの間にしか“スマホ”という概念がなかった時代だ。そんな時代を先行しすぎたオーディオブックサービスもスマホが当たり前になり、スマートスピーカーという新たな味方を得て、ようやく時代が追いついてきたというところだろうか。
また、スマートスピーカー・Amazon Echoを提供するアマゾン社も自社のオーディオブックサービス「Audible」を展開。月額1500円と前述のaudiobook.jpよりも値は張るが、人気作や名作などを含む多彩なジャンルを取り揃えている。また読み上げるナレーター陣も人気俳優やタレント、声優を起用するなどその力の入れようはなかなかのもの。これまで招待制だったAmazon Echoの販売が一般に開放されるなど、Audibleにとって追い風と言える状況も整いつつある。しかし、Echoでの書籍読み上げ機能は国内未対応なのが歯がゆいところだ。同じようにスマートスピーカーを持つGoogleもオーディオブック市場に参入。1月にはGooglePlayストア内にオーディオブックコーナーを開設し、提供を始めた。Googleが持つスマートスピーカー・Google Homeでももちろん読み上げが可能で、3月末には中断した文の最初にさかのぼって読み上げる「スマートレジュメ」機能をはじめとする5つの新機能が発表された。日本では一部の機能が非対応となっているが、過熱するオーディオブック市場が日本に最適化されるのも時間の問題だろう。