『トゥームレイダー』シリーズの20年史が示す、映画とゲームの相互的な影響

『トゥームレイダー』シリーズの20年史が示す、映画とゲームの相互的な影響

ゲームと映画の融和点となる『トゥームレイダー』

 今回映画化されたゲーム『トゥームレイダー』(2013年)は、主人公の設定が一新されたのと同様、演出やヴィジュアル、ゲームシステム自体も飛躍的に高度なものに変更されている。プレイするルートを限定せず、一部「オープン・ワールド」の要素をとり入れ、また操作できる部分とムービーの部分を厳密に分けず、全体的にそれらを馴染ませることによって、没入感と臨場感を高めている。今までの『トゥームレイダー』の伝統に固執せず、他のゲームの築いた要素をも積極的に導入したことで、より「映画」へと接近したタイトルになっている。

 そのなかで注目したいのは、ゲーム版の中で時折見られる、プレイすることができるムービー部分、いわゆる「プレイアブル・ムービー」と呼ばれるような箇所だ。それは通常プレイできないはずのリアルな映像部分を操作できていると、プレイヤーに思わせる効果を発揮する。実際にはムービー自体は操作できないのだが、ムービー再生中に、ある制限時間の中でプレイヤーにコマンド操作を行わせることで、その結果をゲーム側が判別し、用意された複数のムービーそれぞれに分岐させるのだ。

 このように、ムービーを見ながら操作するというシステムをゲーム史上初めて導入したのは、『ドラゴンズレア』(1983年)という、レーザーディスクを利用したゲームだった。そのゲーム性は単純極まりないのだが、現在のゲームでは、ときにこれを演出の中に差しはさむことによって、プレイ部分とムービー部分の間を補完し、緊張を持続させている。

 この演出を映画で再現したのが、『トゥームレイダー ファースト・ミッション』の最もエキサイティングな部分である。荒れ狂う海の上でのサバイバルや、急流に流されていく危機一髪のシーンは、ともすればありふれたノンストップ・アクションにも感じられるが、注意深く見ると、ララは優れた判断力によって、いくつもの分岐する選択肢の正解のみを連続して選び取っていることが理解できるだろう。ここで観客は、自分自身の感覚も研ぎ澄ませながら、リアルタイムで能動的に「映画(ムービー)」に参加するように促されている。

 ゲームが映画を模倣し、映画がゲームを模倣する。その相互的な影響が最もよく分かる象徴的な作品が、ゲーム版、映画版の『トゥームレイダー』シリーズなのだ。今後、より映画に近づいたゲーム、ゲームに接近する映画が、新技術や演出によって現れてくるだろう。その未来を占うためにも、『トゥームレイダー』の動向はぜひチェックしておきたい。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『トゥームレイダー ファースト・ミッション』
3月21日(水・祝)全国公開予定
監督:ローアル・ユートハウグ
出演:アリシア・ヴィキャンデル、ドミニク・ウェスト、ウォルトン・ゴギンズ、ダニエル・ウー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND METRO-GOLDWYN- MAYER PICTURES INC.
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/tombraider/

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