ホワイトハウスが発表した“暴力的なゲーム映像集”に批判集中

 ドナルド・トランプ大統領が、3月8日にビデオゲーム業界の有識者と非公開で会合を行い、この会合で流された“暴力的なビデオゲームの映像集”(Violence in Video Games ※閲覧注意)がホワイトハウスの公式YouTubeアカウントにて公開され、大きな話題を呼んでいる(現在はYouTubeの限定公開)。ホワイトハウスの公式YouTubeアカウントがこれまで発表してきた映像の中で、2017年1月の就任式の公式ビデオを上回り、5番目の閲覧数を記録している。すでに100万回を超える再生数で、7.8万件もの「低い評価」が付いている。

 このビデオに含まれるゲームは、ビデオゲーム業界のエンターテイメントソフトウェア評価委員会によってすべて「M」(成熟した視聴者のみ、17歳以上)と評価されたもので、タイトルは『Call of Duty:Modern Warfare 2』『Wolfenstein:The New Order』『Dead by Daylight』『Fallout 4』など。米東南部フロリダ州パークランドの高校で発生した銃乱射事件のように、ビデオゲームが大量の射撃につながる可能性があると示唆している。また、ホワイトハウスと米国内の多くの議員には、暴力的なビデオゲームに税金を課すことによって、これらを抑制しようという狙いがある。例えば、ロードアイランドのある議員は、州で売られているすべてのM格ビデオゲームに10%の税金を導入する法案を提案している。

 しかし、ゲーム業界が指摘するように、ビデオゲームの暴力と現実世界の暴力が相関するという証拠は今までにない。ゲーム出版社を代表する業界団体であるエンタテインメントソフトウェア協会(Entertainment Software Association)は、ビデオゲームが現実世界の暴力に寄与しているかどうかの問題について、ウェブサイト上で「特に暴力犯罪は、1990年代初めから劇的に減少している。(中略)同じ期間に、ビデオゲームの人気と使用は着実に増加しました。因果関係があれば、予想とは正反対です」と声明を発表している。

 また、『Call of Duty:Modern Warfare 2』の開発会社であるアクティビジョンは、2009年に同作の暴力的なシーンが議論を巻き起こした際に、「このシーンは、ロシア人の悪役たちの冷酷さと深みを確立している。悪を確立することによって、それを止めるという使命の緊急性が高まる」と、ゲームの物語において不可欠な表現だったことを主張している。ゲームにおける暴力的なシーンに関しても、映画などのメディアにおける暴力表現と同様に文脈を踏まえて評価すべきだという考えだ。

 なお、銃乱射事件に対するトランプ大統領の対応の一環として発表されたこの会議は、より具体的な銃規制措置からの“意図的な気晴らし”としても批判されている。

(文=編集部)

参考:THE VERGE/The White House meeting on video game violence was unproductive and bizarre
参考:Variety/Trump White House’s Horribly Violent Video-Game Reel Goes Viral
参考:SCREEN RANT/White House Video Game Violence Reel Is Absolutely RidiculousWhite House Video Game Violence Reel Is Absolutely Ridiculous

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