AIで誰でも簡単に合成映像が作れる! 『FakeApp』の面白さとその使い方
LINE、Google、Amazon、Appleといった企業が次々とAIスピーカーを発売するなど、AI(人工知能)を活用した製品は次第に身近なものになりつつある。AIを巡っては、雇用に与える影響や医療分野での活用、囲碁や将棋といったゲームでの活躍など、いまやあらゆる分野で話題だ。
「人工知能(Artificial technology)」という用語の生みの親であるジョン・マッカーシーが牽引した1960年代の第一次AIブーム、専門分野における知識をコンピュータに入力して高度な情報処理を行う「エキスパートシステム」が盛んに開発された1980年代の第二次AIブームに続き、現在は第三次AIブームと言われている。この第三次AIブームの中でも革新的な技術は、サンプルデータ集合を解析してコンピュータが自ら学習してアルゴリズムを発展させる「機械学習(マシンラーニング)」と、多層のニューラルネットワークによって人の処理能力をはるかに上回るビッグデータを活用する機械学習手法「深層学習(ディープラーニング)」だろう。Googleの研究者たちが開発した囲碁用のコンピュータープログラム「アルファ碁」や、話題のAIスピーカーもまた、ディープラーニングの成果である。
今回、本稿で紹介したいのは、ディープラーニングを活用したAIアプリ『FakeApp』とそのチュートリアル映像。『FakeApp』は、一言で言ってしまえば動画における「AI合成アプリ」で、ふたつの映像のデータを解析して、たとえば映画の登場人物の顔に自分の顔を当てはめたりして楽しむことができるアプリだ。まずは、このアプリを用いたAI合成動画の精巧さに驚いてほしい。
あらゆる映画のワンシーンに、極めて自然な振る舞いでニコラス・ケイジが出演しているが、これがなんとすべて『FakeApp』による合成映像なのだ。現在、このアプリを活用してニコラス・ケイジの合成映像を作るのは一種のインターネット・ミームとなっていて、彼の出演作(?)が爆発的に増殖しているのである(おそらく、自身の"顔を入れ替えて"犯人を追うFBI捜査官役を演じた『フェイス/オフ』にかけているのだろう)。
こうした技術は、VFXの世界ではフェイス・リプレイスメントと呼ばれ、ナタリー・ポートマンが主演を務めた『ブラック・スワン』のバレエのシーンなどでも使用され、注目されてきた。しかし、こうした映像を制作するには、膨大な時間と資金と技術が必要であり、一般人にとっては簡単に作れるものではなかったのである。それが『FakeApp』の登場によって、誰もが簡単に合成動画を作れるようになったのだから、ディープラーニングの学習能力とは恐ろしいものである。
そして、気になる使い方も、チュートリアル文化が根付いている欧米らしく、YouTubeに丁寧な動画がアップされている。
この動画を簡単に説明すると、以下のような手順で合成を行っていることがわかる。
●0:17~:オフィシャルサイトからのFakeAppをダウンロード。
●1:32~:合成作業スタート。まずはアプリに合成する二つの動画素材(顔用そしてボディ用)を取り込み、1フレームごとに分ける。
●3:31~:1フレーム毎にわけた二つの素材の特徴を学習させる「TRAIN」といわれる過程。なんとこれも1クリックで可能。AIが二つの素材の共通点を自動的に学習していく様が興味深い。
●6:11~:最終段階。これまた「CREATE」のボタンを1クリックするだけ。1フレーム毎に二つの素材が「MERGE」(合成)されていくのがわかる。
●11:12~:合成完了。
これを上手く活用すれば、たとえば結婚式で流す余興映像で、有名映画のワンシーンに新郎新婦の顔を当てはめるなど、みんなで盛り上がる映像が作れること間違い無しである。ぜひ、チャレンジしてみてほしい(もちろん、著作権や肖像権には十分に注意を払ってほしい)。