『JIN-仁-』に匹敵するヒット作誕生の予感 『いろはの恋は時代をかける』胸を打つ幕開けに

『いろはの恋』“教えること”への切実な願い

 脚本を手がけるのは、連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)の長田育恵。植物への愛に一直線だった万太郎と、算学が好きで教師になりたいと願ういろはには、周囲を巻き込むほどの熱が共通している。一人の「好き」を、その人が生きる時代や社会との関係まで含めて描く厚み。ポップな掛け合いを楽しませながら、関の言葉がいろはの涙につながる構成には、長田の脚本の力を感じた。

 彩葉の部屋にはもう一つ、教える仕事への情熱を伝えるものがあった。全学年、全教科の一年分の授業計画を記した膨大なノートだ。心を病んで一年間休職していた彩葉は、復職先でも朝早くから終電近くまで働き詰めだった。だが、業務に追われても子どもたちに過不足なく教えられるよう、あらかじめ準備していたのだろう。いろはが憧れる仕事を、彩葉も大切にしたかった。その努力が見えるほど、再び追い詰められてしまったことが悲しい。

 生琉も、子どもの心に残る先生になりたくて教師になった一人である。しかし、子ども同士の喧嘩に対応しても保護者から責められ、家庭での生活に関わることまで責任を求められる。校長や副校長からの助け舟も出ず、最後は頭を下げるしかない。子どもたちに深く関わろうとするたびに傷つく日々の末に、彼が選んだ方針は「無難」だった。

 いろはにとって、先生は身分を問わず敬われる存在だ。だからこそ、周りの顔色をうかがってばかりだという生琉を叱りつける。けれど彼女には、彼がそうせざるを得なくなった事情がまだわからない。「そんな時代じゃないんだよ、今は」という生琉の反論も切実だった。憧れに値する仕事でありながら、それを担う人の思いや生活が蔑ろにされている。そのもどかしさが、二人の言い合いから浮かび上がる。

 いろはの熱意が周囲を動かすと同時に、現代で働く経験が彼女をどう変えていくのか。教師になれる喜びの先にも、知るべきことが待っている。それでも、今のいろはには「知らないことは学べばいい」と踏み出す力がある。

 初回の最後に、生琉はいろはへの協力を決めた。火事を消し止めようとして消火器の粉を浴びた自分を「最悪」と嘆く彼に対し、いろはは舞う粉を雪のようで「最高」だと喜ぶ。帰り道にも転んでしまう生琉は、相変わらず不運な体質だ。ただ、一つ変化があったとすれば、今はそばに笑って手を差し伸べてくれるいろはがいること。「何か、変わるかもしれない」という生琉の言葉には、二人がこれから支え合っていく予感があった。

 現代の医師が幕末へ向かう『JIN-仁-』(TBS系)とは反対に、本作では江戸の娘が現代へやってくる。時代の異なる環境で壁にぶつかる主人公と、その人を支える相手。MISIAの歌声も相まって、2つの作品を重ねずにはいられない。なにより、時代を越えるファンタジーに人間と社会への深い洞察が息づく初回は、『JIN-仁-』に匹敵するヒット作の誕生を予感させた。いろはと生琉が互いを変えながら、どんな教師になっていくのか。これからの火曜夜が楽しみだ。

■放送情報
火曜ドラマ『いろはの恋は時代をかける』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:上白石萌音、向井康二、山中柔太朗、大森元貴、剛力彩芽、大西礼芳、白山乃愛、YOU、イモトアヤコ、保田圭、竹財輝之助、柳ゆり菜ほか
脚本:長田育恵
演出:田中健太、福田亮介
音楽:Ken Arai
主題歌:MISIA「さよならばっか」
プロデューサー:宮﨑真佐子、松本明子
協力プロデューサー:阿部愛沙美
編成:渡邊晏夏、関川友理
製作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koitoki_tbs/
公式X(旧Twitter):@koitoki_tbs

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