『俺たちの箱根駅伝』が描く、生中継の舞台裏とテレビ局の内幕 節々から感じる日本テレビの“本気”
日本テレビ系の土曜ドラマ『俺たちの箱根駅伝』(日本テレビ系)が10月10日にスタートした。池井戸潤原作であることはもちろんだが、主演の大泉洋から脇を固めるキャストまで、ずいぶんと“「日曜劇場」感”のある作品だが、箱根駅伝といえば日本テレビ。しかも陸上競技を題材にした作品の多くは競技者にスポットライトを当てがちではあるが、本作ではそれと併行しつつも、中心にあるのは箱根駅伝の生中継を任されたテレビマンたちの姿。そういった意味では、1987年から40年にわたって箱根駅伝を中継してきた日本テレビにしかできないドラマといってもいいかもしれない。
大日テレビのスポーツ局で、箱根駅伝中継のチーフプロデューサーを務める徳重(大泉洋)。彼は本番まで3ヶ月を切ったタイミングで、編成局長の黒石(高橋克典)がタレントをゲストに迎えたバラエティ色の強い中継にしようと画策していることを知って猛反発。黒石が勝手に話をつけていた大手芸能プロダクションに直接断りに行った徳重だったが、それがきっかけで局全体を巻き込んだ大問題に発展してしまうのである。
冒頭の予選会中継のシーンから、局内で繰り広げられるごたごた模様、そして終盤の役員会議と、第1話での“大日テレビパート”は登場人物たちの立ち位置や力関係などを示す導入としての役割に徹していた印象だ。箱根駅伝の歴史を背負って情熱的に突き進もうとする徳重に、スポーツ中継への強いリスペクトをもってクールに仕事をこなす宮本(伊藤沙莉)。さらには中継チームの若いディレクターたちから職人的な風格が漂う技術スタッフ、“風見鶏”と呼ばれるスポーツ局長にいたるまで。
社内の上下関係がはっきりと見える人間模様だけでなく、彼らテレビマンたちが番組づくりには欠かせないタレント事務所やスポンサー企業と板挟みになる姿はなかなかに興味深い。“箱根駅伝中継の舞台裏”を見せるドラマであると同時に、“テレビ局が作るテレビ局の内幕”――しかもそれが、このドラマの放送局の年始を代表するビッグイベントたる箱根駅伝をめぐるものというメタ的な点も含め、日本テレビの“本気”を節々から感じずにはいられない。
なにより、こうした職業性に特化したものであっても、昨今の群像劇はどうしても登場人物たち各々のミクロなドラマの集合体になりやすい。しかしながら本作の登場人物たちは皆一様にして、最初から“箱根路”に照準が定まっている。徳重が芸能プロダクションの田村(小日向文世)に語る言葉を引用すれば、「学生たちの今をそのままに届けること。レースの機微を徹底的に正しく伝えること」に完全に向いているのだ。そのブレようがない芯が、池井戸作品の真髄とも言える“組織のドラマ”として、大日テレビの群像をより強固なものにするのであろう。
一方で、競技者として箱根路を志す者たちである学生たちのパートは、対照的に個々人の描き込みが強くなると思われる。わずか10秒の差で予選会を突破できなかった明誠学院大学チーム。そのキャプテンであり、自責の念に駆られる青葉(小林虎之介)と、新たに陸上部の監督に就任した“伝説のOB”である甲斐(山下智久)。彼らが向かう学生連合チームには、さまざまな大学から集められた精鋭たちが集うこととなる。
たしかに劇中で大日テレビのAD戸山(山田杏奈)が疑問視するように、予選会に漏れた大学とはいえ各校のエース級が集められた学生連合チームがなぜそれほど強くないのか?という点は、箱根駅伝を見てきた人ならば一度は考えたことがあるだろう。どうにもチームの結束力という精神論だけで片付けられがちではあるが、駅伝は襷をつなぐチーム戦であると同時に、陸上競技特有の孤独な戦いでもある。この相反する両面から見出されるドラマもまた、非常に熱いものになるはずだ。
■放送情報
『俺たちの箱根駅伝』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:大泉洋、伊藤沙莉、小林虎之介、奥智哉、山田杏奈、市川猿弥、小日向文世、生瀬勝久、竹中直人、寺尾聰、浅香航大、望月歩、河内大和、水沢林太郎、菅生新樹、荒木飛羽、庄司浩平、林裕太、山本耕史、駿河太郎、金田明夫、高橋克典、山下智久
原作:池井戸潤『俺たちの箱根駅伝』(文藝春秋)
脚本:鈴木すみれ、松田裕子
演出:猪股隆一、山田信義 ほか
主題歌:桑田佳祐
プロデューサー:小田玲奈、藤澤季世子、大井章生、鈴木香織、森雅弘
協力:一般社団法人 関東学生陸上競技連盟
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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