『ブラッサム』珠と清治の間で反転した“自由”の意味 宇野千代が咲かせた自分という花

ただ、珠(石橋静河)の心を自由にした物語も、女性の生き方を制限する現実までは変えてくれない。書いた小説は学校の方針に反するとされ、同人誌『黎明』の活動は禁止された。それでも年が明けると、珠は「書きたい気持ちが溢れてどうしようもないんよ」と、友人たちに再開を呼びかける。物語の中で得た自由を、今度は自分の生き方にも広げようとする姿に見えた。
珠が父の願いを受け継ごうと意識しているわけではない。自分を自由にしてくれた物語を、もっと読みたい、自分でも書きたい。その欲求に従う歩みが、父の得られなかった自由を求めることにもつながっていくのだと思う。

そして、清治を描いたこの2週間は、これから宇野千代をモデルにした珠をどう描くのか、その予告でもあったと思う。家族を苦しめた清治にも、娘の作文を喜び、カナリアを見つめて微笑む顔があった。ただ、その顔を見せたからといって、理不尽な行いまで美談に変わるわけではない。父の死後、珠は心がせいせいする自分を「ひどい娘じゃ」と責めると、リョウは「それでええんよ」と受け止める。

宇野千代の波乱万丈な人生をモデルとする珠にも、見る人が共感できない選択はあるだろう。清治を美化せず、露悪的に描くこともなく、ただ一人の人間として描いたこの2週間には、これからの珠にも同じまなざしを向けていく、本作の姿勢が表れていた。
私よ、咲き誇れ――。女性、妻、母。あるいは男性、夫、父。そうした肩書きや役割だけでは語れない、あなたという人間は、どんな花を咲かせるのか。この2週間は、清治と珠の姿を通して、そんな問いを投げかけていた。
「最高です!」。それは、最高ではなかった日々も含めて自分の人生を生き、自分という花を咲かせた人の言葉なのではないだろうか。珠がその言葉にたどり着くまでを、見届けたい。
■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK




















