『ブラッサム』の父・清治は歴代朝ドラでも“史上最恐”? その“得体の知れなさ”を考える

『ブラッサム』“史上最恐”の父を考える

 NHK連続テレビ小説『ブラッサム』が始まった。YOASOBIによる華やかさと力強さのある楽曲と、主人公・葉野珠を演じる石橋静河の軽やかなダンスに、毎日元気をもらえそうだ。モデルとなっている宇野千代の雰囲気を纏った、85歳の珠役の加賀まりこと、秘書・藤川優子役の松たか子には、SNSでも好感を寄せる声が目立った。

 そんな安心感も束の間、珠の子ども時代になると、一気に不穏な空気が漂ってきた。もはや朝ドラ名物とも言えそうな「クセつよ」な父親の登場である。渡部篤郎演じる父・清治は、町でも札付きの「クズ」のようで、仕事もせずに遊び呆け、なぜか馬を買って暴走したりするエキセントリックな男だ。派手な動きをする割には陰鬱な雰囲気で、家族にはすこぶる高圧的。気に入らないことがあると、すぐに妻のリョウ(国仲涼子)や長女の珠(村上蘭)を呼びつけて、理不尽な命令を下す。ニコリともしない冷ややかな睨みを効かせる場面では、見ているこちらまで緊張を感じるほどだった。飼っているカナリアの餌がないからと、雨の中、珠を裸足で買い物に出して、「草履は傷むが、足は腐らん」と言い放ったり、酒がないといって、夜中に酒と覚えきれないほどのつまみを頼んでお使いに出すなど、なんとも意地が悪い。

 クセつよな父親といえば、近年の朝ドラの中でもインパクトがあったのは、『おちょやん』(2020年後期)での竹井千代(杉咲花)の父・テルヲ(トータス松本)だろう。養鶏を生業としているものの、世話などは千代たち子どもに任せっきりで、自分はそれを搾取するだけ。口が立って面白い男だからモテるのだが、連れてくるのは身勝手な女。いよいよ立ち行かなくなると、子どもを次々に奉公に出してしまう。その自己中心的な行動は尋常ではなかった。千代を奉公に出した時には、「うちは、捨てられたんやない。うちがあんたらを捨てたんや」と言い放たれるほどのクズっぷりだった。

 そのテルヲを演じたトータス松本は、制作陣から「『おしん』(1983~1984年)の伊東四朗さんが演じた作造さんのような、“西の作造さん”になってくれませんか?」(※1)と言われていたという。作造もまた、酒を飲んでは女房子どもに手をあげる。しかし、作造の陰惨さは、当時の農村の貧しさのせいだともいえる。あまりにも生活が苦しく、口減らしのために子どもを奉公に出すしかなかったのだ。作造の人間性がもともと悪いわけではないことは、あの川での別れの名シーンを見ればわかる。

 作造もテルヲも、基本的には、その貧困が荒れた性格や暮らしにつながっていたと思われる。しかし、今回の父・清治は、少し趣が違っている。というのも、清治は、岩国でも有数の酒蔵の息子であり、遊んで暮らしても生活に困りはしないようなのだ。それなのに、なぜあんなに暗い目をしているのか。自由に生きているようなのに、なぜ鳥籠のカナリアに「窮屈そうじゃのう、お前も」などとつぶやくのか。

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