『ブラッサム』の父・清治は歴代朝ドラでも“史上最恐”? その“得体の知れなさ”を考える

このなんともいえない「得体の知れなさ」は、渡部篤郎が演じているからこそという面もありそうだ。渡部といえば、筆者の中ではなんといっても『ケイゾク』(1999年/TBS系)の真山徹の印象が強い。ぶっきらぼうで口が悪く、何を考えているのかわからない、何をしでかすのかもわからない、危ない魅力に溢れていた。最近では、今年の『さよならノワール』(フジテレビ系)でも、失踪してしまった元刑事・山崎創を演じていたが、そこでも、空虚で冷徹な謎めいた男を、言葉少なく不気味に演じていた。
そして、今最も注目されているのは、やはりNetflixシリーズ『ダウンタイム』での遠山凛(仲里依紗)の父親役であろう。神の手を持つ整形外科医としてメディアにもてはやされ、周囲から称賛される成功者でありながら、その笑顔の奥に底知れない闇を感じさせる人物だ。我が子に向ける身勝手な支配欲と執着には狂気じみたものがある。一方で、暗い過去の傷が影を落としていることも垣間見え、その哀愁が人物に奥行きを与えている。渡部らしい影のある演技が印象的だ。

宇野千代は、自身の父のことを「バルザックかドストエフスキーの小説の中にしか出て来ないような一種の奇人乃至狂人だった」と評しているという(※2)。興味深いのは、そんな酷いことをされた父を憎んでいるわけではないことだ。ドラマの中でも、珠は父のことを「嫌じゃない」と言う。朝ドラの父親は、主人公を苦しめる存在として登場し、やがて物語の中で救いや家族との和解を与えられることが多い。しかし、この清治に、そんなに分かりやすい結末が待っているとは思えない。父親の中にある人間の得体のしれなさ。それこそが、珠がのちに作家となる最初の土壌になるのかもしれない。
■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK





















