『踊る大捜査線 N.E.W.』に見た“煉獄” 天国でも地獄でもない場所で青島俊作は走り続ける

出口のない原点回帰

映画のラスト、青島は気づけばまた過去の場所に戻されている。タクシーで運ばれた場所は、かつてテレビシリーズで湾岸警察署として使われていた、いわゆる旧湾岸署。張り紙には「第二湾岸警察署建設予定地」と書かれていた。
見ようによっては、青島が戻るべき場所に戻ってきた、原点回帰の前向きなラストとも受け取れるだろう。しかし、やはりどこか不気味にさえ感じてしまう。映画の特典として配布された資料によれば、本作は2026年12月10日から13日までの4日間の物語で、最終日の12月13日は青島の59歳の誕生日にあたるという。
59歳。かつて和久さんが定年を迎えた60歳は、もう目の前だ。公務員の定年が段階的に引き上げられ、今は62歳になったとはいえ、残された時間はそう長くない。むしろ“辞めどき”さえ引き伸ばされている。還暦を目前にして、あの場所に青島が戻ってくる予感に心昂るも、組織の論理に抗い続けた男が、この年齢になるまで走り続けたのに警察という組織がさほど変わっていないことへの絶望も色濃い。

青島は旧湾岸署を横目に、またどこかへ歩き出す。そして道に落ちていた白い箱――冒頭の誘拐事件で指示書が入っていた箱を見つけた青島は、慄き、叫ぶような表情で画面に向かってくる。そのカットで、この映画は終わる。まるで新たな“指示”を受け取ることを恐れているかのように、スクリーンのこちら側に助けを求めるかのようにさえ見えてしまうのだ。エンドロール後には、続編の可能性を残す言葉が添えられていた。青島は、『踊る』は、また抜け出せずに走らされるのだろうか。知っているようで、知らない“あいだ”の場所を。
■公開情報
『踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!』
全国公開中
出演:織田裕二、趣里、白洲迅、佐々木蔵之介、増田貴久、野呂佳代、玉井詩織(ももいろクローバーZ)、藤吉夏鈴(櫻坂46)、齊藤なぎさ、佐藤二朗、ユースケ・サンタマリア、真矢ミキ、水野美紀、甲本雅裕、寺島進、伊藤淳史、滝藤賢一、松重豊、松下洸平、斉藤暁、小野武彦、北村総一朗
監督:本広克行
脚本:君塚良一
プロデュース:亀山千広
音楽:松本晃彦
主題歌:織田裕二「Love Somebody(CINEMA Version)」(ユニバーサル ミュージック)
配給:東宝
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