堺雅人が『VIVANT』で証明する“異次元”の演技力 “一人三役”の先にある俳優の真髄

 途方もなく壮大なスケールに、アツい火花を散らし合う日本屈指の演技者たちーー今期はやはり、放送中のドラマ『VIVANT』(TBS系)が大きな注目を集めている。2023年に放送された第1シーズンに続き、いや、あれをさらに上回るダイナミックさで第2シーズンは進行し、日本中の視聴者を熱狂させているところだ。そんな作品の中心に立つ主演俳優・堺雅人の凄まじさに、いま改めて圧倒されている。ここでは彼の演技にフォーカスしてみたい。

 本作は、日本を基点に、モンゴルやアゼルバイジャンなどをも舞台にした、スペクタキュラーなエンターテインメント。堺が演じる主人公・乃木憂助は商社勤めの気弱でうだつの上がらない人物で、彼がとある事件に巻き込まれるところから、この物語ははじまった。しかし、彼の真の姿は自衛隊の非公認部隊「別班」の諜報員。いくつもの出会いと別れを重ねながら、物語は私たちの予想外の展開を繰り返している。

 いま乃木はどこにいて、彼の身に何が起きているのか。地上波ドラマとしての情報量が規格外で、ぼうっとしていると彼の歩みに置いていかれそうになる。表の顔である会社員としての彼はどうにも冴えない人物だが、裏の顔である「別班」の諜報員としての彼は使命と宿命を背負い、たびたび訪れる死戦をくぐり抜けてきた。主人公がこの“2面性”を抱えているというだけでも、通常のドラマならば大いに注目を集めたことだろう。

 しかし、これを演じるのはあの堺雅人である。彼の代表作である『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)シリーズや、今作と同じく「日曜劇場」の枠で誕生した『半沢直樹』(TBS系)シリーズをフォローしてきた方々ならば、堺が乃木憂助を妙演してみせるところを容易にイメージできたのではないだろうか。けれども『VIVANT』の彼は、そんな私たちの想像を優に超えてきた。そう、乃木はこの“2面性”に加え、“F”というもうひとつの人格を有している。このいくつもの“演じ分け”が、本作の展開に対する私たちの関心の中心にあるだろう。

 この“演じ分け”といえば、鈴木亮平が心優しいパティシエと悪徳刑事の一人二役を演じた『リブート』(TBS系)や、高橋一生が冷徹な社長と好青年の一人二役を演じ上げた『リボーン 〜最後のヒーロー』(テレビ朝日系)が記憶に新しい。その展開もさることながら、やはり優れた演技者たちの“演じ分け”にこそ魅せられたものだ。

 ここに挙げた2作と『VIVANT』が大きく異なるのは、複雑な背景を持つ気弱な乃木と、高圧的な人格である“F”が、ことあるごとに衝突している点だ。つまり、私たちは繰り返し、同一画面上での“彼ら”の掛け合いを目の当たりにしている。これは当たり前の話だが、乃木を演じているときの堺の目の前に、“F”を演じる堺がいるわけではない。逆もまた然り。“F”を演じる堺の隣に、乃木を演じる堺がいるわけではない。

 堺雅人という器は同じでありながら、乃木と“F”は声の質感も身振り手振りも、大きく違う。これを実現させるには相当な困難があるに違いなく、とんでもない負荷がかかり続けているはず。しかし、この途方もないスケール感の作品で、日本を代表する俳優陣に揃い踏みしてもらおうというならば、主演俳優はこの難役を軽快に演じられる者でなければならないのだろう。

 優れた演技者は、各世代に存在する。けれどもこの役どころをまっとうできる人物は、さすがに堺以外にいないだろう。熱量高く演じているが、だからといって演じるという行為そのものに溺れている様子は一切ない。作品そのものが有する熱量と拮抗しながら、その声と表情と所作によって、私たち視聴者の視線と意識を誘導しているように感じる。それでいてこの第2シーズンからは、さらに堺の演じるキャラクターが増えた。サイコチックな諜報員の劉銘軒(リュウ・ミンシュエン)である。

 彼が現れたとき、こちらは完全にもうお手上げ状態だった。“地上波ドラマ”という枠組みの中で、俳優・堺雅人は恐ろしい領域へと踏み込んだ。演じることに文字通り身を投じる者の真髄に、これからの私たちは触れていくことになるのだろう。ただ圧倒されるばかりでなく、一つひとつの表現が演じ手のどのような意図によって生まれているのか、つぶさに追っていきたいものである。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、内野謙太、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、井上順、林遣都、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、宮下今日子、Tanapak Jongjaiphar、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
公式TikTok:vivant_tbs

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