『踊る大捜査線 THE LAST TV』は“スピンオフ”ではない シリーズの流れとともに解説
スペシャルドラマ『踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』(フジテレビ系)は、劇場版第4作『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年)の1カ月前のできごとを描いた物語である。結果的に『踊る』シリーズは「THE ODORU LEGEND STILL CONTINUES」として再始動を果たすことになったわけだが、両作品が製作された2012年時点の計画では『THE FINAL』が“最終章”。すなわち『THE LAST TV』はそのタイトルが示す通り、テレビドラマとしての『踊る』の最後を飾るつもりで作られた作品といえるだろう。
そもそも1997年1月期の連続ドラマとしてスタートした『踊る』シリーズ。連続ドラマ終了後から劇場版第1作が公開される1998年秋までの1年半ほどのあいだに『踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル』と『湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル』、そして『踊る大捜査線 秋の犯罪撲滅スペシャル』という3つのスペシャルドラマが放送されている(いずれもフジテレビ系)。これらは、当時いまほど主流ではなかった連続ドラマから映画へと作品世界を拡大していくための足掛かりとしての意味合いが強かったはずだ。
連続ドラマにおいてはほぼ1話完結でさまざまな事件が扱われ、それに併走するように湾岸署の刑事たちを中心としたコメディタッチの人間模様が展開。一方で劇場版となると、そこにある人間模様は『踊る』を楽しむ上での前提知識となり、一定の時間制限のなかで複数の事件が同時多発的に起こるスリルが中心に据えられる。それらの中間に位置したスペシャルドラマは、複数の事件と程よいスリル感、そして人間模様のてんやわんやした空気感まで良き塩梅でまとめられており、いわば限りなくコメディに寄せた“準劇場版”のような作りをしている。
それはこの『LAST TV』においても同様だ。青島(織田裕二)たち湾岸署の面々は、中国から研修に来ている王(滝藤賢一)の結婚式の準備に明け暮れており、その矢先に管内で殺人事件が発生する。そこに国際的な詐欺事件との関連が確認されたことから、鳥飼(小栗旬)ら本庁の捜査官たちが湾岸署にやってくるというのが、本作における“事件”の主軸だ。そのなかで、本庁の刑事のふりをして警察の備品を盗んでネットオークションに売りに出す窃盗犯が現れたり、湾岸署内では真下(ユースケ・サンタマリア)ら新署長グループと“スリーアミーゴス”こと旧署長グループの派閥争いが繰り広げられ、さらには警察上層部のなかで室井(柳葉敏郎)とすみれ(深津絵里)を結婚させようという動きが出てきたり。
スピンオフではなくメインシリーズの一環としてのスペシャルドラマは先述の『秋の犯罪撲滅スペシャル』以来、実に14年ぶり。普通に考えれば、『THE FINAL』に向けてこれまで『踊る』に触れてこなかった世代へ向けた間口を拡げようというねらいがあったとも捉えられるが、おそらくそうではなさそう。劇中でキャラクターが立てられているのは、王や和久伸次郎(伊藤淳史)や栗山(川野直輝)といった、シリーズ途中から加わったメンバーばかり。彼らの個性や立ち位置を、もはや説明不要のメインキャラクターたちと同じようにテレビドラマの枠組みのなかで明確化しておく。それは『THE FINAL』に向けて、ということ以上に、この時点から“その先”を見据えてのことだったのかもしれない。