『風、薫る』“りん”見上愛と“シマケン”佐野晶哉に温度差? すれ違い続けた2人の恋の現在地
NHK連続テレビ小説『風、薫る』に、シマケン(佐野晶哉)が再登場した。
となると、やはり気になるのはりん(見上愛)との関係だ。これまで何度もすれ違いながら、それでも少しずつ距離を縮めてきた2人。シマケンが再び姿を見せたことで、改めて2人の歩みを振り返りたくなるところだ。
りんとシマケンは、出会った頃からどこか不思議な距離感にあった。瑞穂屋で外国人客への対応に困っていたりんを助けたのがシマケン。流暢なフランス語を話す一方、自分について聞かれても「何者でもない」とはぐらかすなど、りんからすれば最初は何を考えているのかよく分からない青年だった。
それでもシマケンは一ノ瀬家に自然と溶け込み、りんが悩んだときにはいつも話を聞いてきた。特に、看護婦として生きていくことに迷っていたりんに対しても、「こうしたほうがいい」と答えを決めるのではなく、りんが自分の気持ちに気づくのをそっと手助けしていた。苦しいときにふらりと現れて、凝り固まったりんの心を少し軽くしてくれる。そんなシマケンを、りんが“とんび”のように感じるようになったのも自然なことだったのだろう。
だが、恋愛となるとシマケンは驚くほど奥手。りんが新潟へ行くことになった際も、いよいよ気持ちを伝えるのかと思いきや、口にしたのは環にとって「おせっかいなおじさんになる」という宣言。シマケンなりに一ノ瀬家とのつながりを大切にしたかったのだろうが、りんとしては思わず「そっち?」と言いたくなるような展開である。その後、新潟までりんを追いかけたシマケンは、海辺でついに「いとおしいです」と伝えた。以前りんから教えてもらった「いとしげ」という言葉を使った、いかにもシマケンらしい告白だった。りんも涙を浮かべ、その思いを受け止める。しかし、ここまで来ても2人はすぐに恋人同士にはならない。
そんな煮え切らない関係を動かしたのが、横沢(井上祐貴)の登場だった。りんに結婚を申し込むなど、自分の気持ちをまっすぐ伝える横沢は、シマケンとは正反対のタイプ。さすがのシマケンも焦ったのか、「他の誰かといるのも嫌なんです!」とようやく本音を口にした。そして小説家になるまで待ってほしいと伝え、りんも「待ちます」と答える。何度もあと一歩のところで止まっていた2人だけに、ようやく思いが通じ合ったことにホッとした視聴者も多かったのではないだろうか。
だが、その後もシマケンとりんの恋はすんなりとは進まなかった。小説の連載がなくなり、さらに実家の事情も重なったことで、シマケンは小説家になる夢を諦め、浜松へ戻ることを決める。そしてりんに「一緒に浜松に来てほしい」と伝えた。恵風看護婦会の仕事があり、環との生活もあるりんにとって、人生を大きく変える選択である。それでもりんは悩んだ末に、「シマケンさんと一緒に生きていきたいです」と答えた。ずっと待つ側だったりんが、ここでは自分からはっきりとシマケンとの未来を選んだのだ。
ところが、なんと今度はシマケンのほうが別れを選んでしまう。りんの手を取り、その手は大勢の人のために働く素敵な手だと話し、「僕たちは、一緒に生きていくべきではないと思う」と告げたシマケン。りんが看護婦として多くの人に必要とされていることを知っているからこそ、自分と一緒に浜松へ来ることでその道を諦めてほしくなかったのだろう。いかにもシマケンらしい優しさではある。ただ、りんからすれば少々納得できないところもあったのではないだろうか。
なぜなら、りんは仕事も環のことも考えたうえで、それでもシマケンと生きることを選んだからだ。これまでりんが迷ったときには、彼女自身が答えを見つけられるように背中を押してきたシマケン。しかし、このときだけはりんが出した答えを受け取らず、「りんにとってはこちらのほうがいい」と自分で決めてしまった。しかも、それまでシマケンに振り回されながらも「待ちます」と言い続けてきたりんである。やっと自分から手を伸ばしたところで、その手を離されてしまったのだから、相当こたえたはずだ。
それからも、りんは直美(上坂樹里)と恵風看護婦会を支え、多くの患者と向き合い、母として環を育ててきた。そうした毎日を重ねるうちに、りんの中でもシマケンとの恋だけが大きな位置を占めるわけではなくなっていったのだろう。だからこそ、再びシマケンを前にしたとき、以前のようにその一言一言に心を揺らされるりんではなくなっていたとしても不思議ではない。
これまで何度もタイミングが合いそうで合わなかった2人。ようやく気持ちが通じたと思えば離れることになり、再会した今度は2人の思いに少し温度差が生まれている。シマケンは再びりんの心を動かすことができるのか。それとも、離れていた時間の中でりんの気持ちはすでに別の場所へと進んでいるのか。ここまでとことん遠回りしてきた2人だけに、その関係がどこへ向かっていくのか、最後まで見届けたい。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK