『ドラマなふたり』はカップルで観たくないけど観るべき映画 “知ってしまう”という呪い
ちなみに私は、「これまでにやらかした最悪の行い」を大学の卒業文集の題材にしたことがある。もちろんフィクションとして書いた。いや、本当はフィクションではないのだけれど。自分の最悪を一度物語として消費してしまったからなのか、それ以来、妙に嘘がつけなくなってしまった。もはや呪いである。
そして、この“呪い”にかけられた私は、当然のように「これまでにやらかした最悪の行い」を彼氏にも話したことがある。動揺した彼は、なぜか「海に行こう」と言った。そして2人で夜の海を無言で眺めた。あの時間は一体なんだったのだろう。
今思えば、あのとき私は自分の秘密を手放してスッキリした一方で、彼には「知ってしまったあとの時間」が始まっていたのだと思う。
『ドラマなふたり』で描かれるのも、結婚式まであと1週間というタイミングで始まった、その「知ってしまったあとの時間」だ。秘密は、口にした人間にとっては過去でも、聞かされた人間にとっては、その瞬間に生まれたばかりの出来事である。エマにとってはすでに終わった「最悪の行い」でも、チャーリーにとっては、たった今知った「最悪の行い」なのだ。
そう考えると、秘密の告白にはちょっとした呪いのようなところがある。告白した側は秘密から解放される。でもその瞬間、今度は聞いた側がその秘密に囚われる。真実は共有できても、その重さまできれいに半分こできるわけではない。
何でも話すことは、本当に誠実なのだろうか。「隠し事をしないこと」と「誠実であること」は、実は同じではないのかもしれない。『ドラマなふたり』が描いているのは、秘密そのものの善悪だけではない。誰かを愛するとは、その人のすべてを知ることなのか。それとも、知らない部分があることを受け入れたうえで、その人を信じることなのか。
とはいえ、私はもう嘘がつけない。いつか結婚する相手にも、この“呪い”には付き合ってもらうしかなさそうだ。健やかなるときも、病めるときも、そして、知りたくなかった秘密を知ったときも。
それでも結婚式は、海で挙げたいと思っている。あの夜の沈黙の続きが、いつかそこにつながっていたらいい。
■公開情報
『ドラマなふたり』
全国公開中
出演:ゼンデイヤ、ロバート・パティンソン 、アラナ・ハイム、ママドゥ・アティエ、ヘイリー・ゲイツほか
監督・脚本:クリストファー・ボルグリ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2025年/アメリカ/106分/英語/5.1ch/英題:The Drama/字幕翻訳:牧野琴子
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