『風、薫る』佐野晶哉と小林虎之介が体現する対照的な生き様 “夢”と“出世”の行く末

 りん(見上愛)とシマケン(佐野晶哉)の関係に進展ありと思ったら、お別れ? 急旋回に驚かされたNHK連続テレビ小説『風、薫る』第21週「定めと選択」(演出:内田貴史)。

 恋の急展開もあれば、時代も日清戦争に突入し、薫風ではなく暴風が吹き荒れている。太田光が無料看護の患者役で登場したことも話題になった。第21週で注目したいのは、シマケン、太田光演じる平蔵、そして、視聴者の多くが気になっている虎太郎(小林虎之介)だ。

 まずは、シマケン。第100回でお互いの思いを確認したりんとシマケン。第101回ではりんがお弁当を持ってシマケンの家を訪れるという仲良しっぷりを見せた。だがそんな穏やかな日々はほんの一瞬で……。

 ようやくシマケンの小説が新聞連載できることになった。と思った矢先、連載は広告主の親族に取って代わられる。そのうえ実家は長男が借金して行方不明に。悪いことは重なるものとはいうが、悲惨過ぎる。占いでいうと大殺界的な状況である。

 しかも、新聞社の編集長・綿貫(小松和重)に、運や努力の問題ではなく、描くものが極めて弱いと言われてしまう。連載までこぎつけたにもかかわらずだ。会社側の自己都合(コネの力)で差し替わったことを、どうしようもなく描くものが弱いなどと言われても、釈然としないではないか。そう思わないのか、シマケン。明らかに綿貫の論点ずらしだと思うのだが……。そこで小説家をやめる決意をしてしまうのだから、やっぱりシマケンは弱いのかもしれない。

 りんに地元に一緒に来てほしいと本音を言ったものの、結局彼女に負担をかけたくなくて、家の事情は話さないままシマケンは東京を去る。

 最後にもう一度シマケンに会いに行こうとするりんだったが、途中で具合の悪い人に遭遇し放っておけず、彼の旅立ちに間に合わない。すれ違いメロドラマの典型的なパターンである。さすがにこのままシマケンが退場することはないだろう。なんらかの逆転を期待したい。

 第105回ではシマケンが去って2年が経過する。日清戦争がはじまると、虎太郎は薬を戦場に届ける仕事に志願する。

 2年前、虎太郎はシマケンと酒を酌み交わしている。その頃、彼はりんとシマケンがつきあいだしたらしきことを全く知らず、愚直なまでにりんを思っていた。だが、明らかに自分の入る隙がない状況を目の当たりにして、シマケンに本音を語る。

 「いっそりんに養われて平気なクズだったら俺も笑えるのに」「じゃあ努力しろ。血反吐吐くまで努力しろ」

 シマケンも努力してないわけではないだろうが、どこか呑気だ。生活にさほど困っていないように見えるし、自分を極限まで追い込んで小説家になろうとしているふうには見えない。小説連載がなくなったとき、ほかの新聞社に持ち込んだり、同人活動で作品を発表したりしないところにガッツが感じられない。その点、虎太郎にはガッツがある。がんばって東京に出てきて、大手の製薬会社に入って出世した。

 にもかかわらず虎太郎は、夢や教養があるシマケンに敵わないと感じてしまう。虎太郎は江戸時代の名残の身分制度に縛られて、りんと釣り合いがとれないことや、貧乏であるコンプレックスを東京で就職したことで解消した。でも彼には仕事に対する夢や教養がない。そして、りんは夢や教養のあるシマケンを選ぶ。だからといって虎太郎は夢や教養を得ようとするわけではなく、相変わらず愚直なまでに出世を目指している。

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